夢のその先 4
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「いやいや、無理無理無理無理無理!絶対に無理!」
マルサラ辺境伯って、アンジェラ様の実家じゃねえかよ!どこまでも血筋が重要とか、竜の血が大事とか言っている、あの辺境領だろ〜!
衝撃的な殿下のお言葉を聞いて、俺の竜化はあっという間に解けてしまった。
死んでたまるか!と、空中でジャンプをすれば、テラスの中へと引っ張り入れてくれた殿下が俺を見下ろしながら言い出した。
「いいだろ?辺境伯、羨ましいなあ!辺境伯、嬉しくて嬉しくて仕方がないだろ?辺境伯」
威圧が凄すぎて思わず漏らしそうになっちまったぜ。
この王国で最強なのは、やっぱりエリアルディオ殿下じゃねえのか?国王陛下をすでに追い抜いているように感じるんだけどな。
真っ青になってガタガタ震える俺の手を握って引っ張り起こしてくれたのがアンジェラ様で、妃殿下は困り果てた様子で言い出した。
「ごめんなさい。エリオさんったら、自分が辺境伯になりたくて仕方がないのよ」
「嫁の実家だからって事ですかね?」
「私の実家というよりかは、マルサラの領主館がオカルトスポットだから、当主となって心ゆくまで調べたいみたいなの」
「はあ?」
何?オカルトスポットって何?
「うちの領地は帝国やパルマ公国と国境を接しているだけに、過去に何度も衝突を繰り返してきたんだけど、その所為で捕虜の幽霊がうんたら、襲撃を受けた際に、使用人を逃して自らは囮となって死んだ領主夫人の幽霊がうんたら、なんて逸話が山ほどある上に、地下水を汲み上げている水車が軋んで悲鳴のような音になる事から、日中でも首なし騎士が叫んでいるなんて言われるような場所なんです」
「はあ・・・」
「血が大事なんて言っているけれど、強いが正義の脳筋しかいないし、だからこそ自分が行くんだ〜なんてエリオさんは言い出しているんですけど、この人以外に、この国の王太子をやれる人なんていないじゃないですか?」
「それはそうかもしれないんですけど、だからってなんで俺ですか?俺が辺境伯だなんて無茶もいい所ですよ!」
そこで俺は閃いた。
「竜化した奴は他にも居るじゃないですか!長龍を抑え込んだ奴!確かアバッティーニ侯爵家の次男の奴で・・・」
あれ・・そいつって、アンジェラ様の婚約者になったんだけど、異界の雌龍に操られて、アンジェラ様を捨てた上に、傷つけたとか何とかいう奴だったっけぇー〜。
「あいつはカタンザーロで番を見つけたので、辺境には行かないと断言した。南に残るかわりに南の地をその身に変えても守ると宣言したので、南の地はあいつに任せる事に決定した」
「ああー〜」
南はパヴィアナ山脈の部族が降りてきて共同生活を始めたらしく、部族間の諍いだの、地域住民との諍いだのの調停が大変になりそうな上に、とち狂ったパルマ公国が穀物目当てで襲ってくるかもしれないとか何とかいう噂もあるし、これからめっちゃ大変になりそうなホットスポットなんだよな〜。
そこを単独で任された的な感じですかー、大変そー〜。
「そもそもお前の家、五代前までは由緒正しい侯爵家だったわけだろう?」
殿下が言う通り、五代前まではうちは由緒正しい侯爵家だったのだが、王の番に手を出そうとしたとか何とかで、爵位を剥奪されています。
「五代前の国王は、番を監禁するほどの執着系だったからな。ちょっと仲良くお喋りしていただけで爵位剥奪もどうなんだという意見が今でも残っているわけだから」
「いや、残っていないでしょうよ!」
「爵位をお前に戻そうと思う、辺境伯の地位は侯爵位と同じだから」
「いやいやいやいやいや!俺!レアが辺境には行かないって言ったら行かないですよ!」
「何?」
「世界で一番つがいが大事!番が行かないって言ったら、俺、死んでも行かないですからね!」
「あっそう」
殿下は嫁のレアの意見を尊重すると言ってくれたのだが、王都にある自分の家に帰った俺を、今すぐ引越しが可能なほど荷物をまとめたレアが出迎えた。
「先祖の悲願が叶って、爵位を取り戻す事が出来たんでしょう!バジリオ!おめでとう!おめでとう!貴方なら絶対に出来るって思っていたわ!」
俺に抱きついてきたレアは、ぴょんぴょん飛び跳ねながら喜んでいるが、何故、そこまで喜ぶんだ!
「団長!おめでとうございます!」
「昇進おめでとうございます!」
隣の部屋に隠れていたらしい部下たちが続々と出てくると、俺たちを取り囲みながら、目に涙まで浮かべて嬉しそうな顔をしている。
「辺境伯だなんて!めちゃくちゃ立派な地位じゃないですか!」
「さすが我らが団長!」
「あんたはここで終わるような人じゃないと思っていたんですよ!」
「団長!あとは俺らに任せてくれれば大丈夫ですから!」
副官のジェトロが俺の手を握ってブンブン上下に振りながら言い出した。
「殿下に言われてから根回しは済ませているので、引き継ぎの方はほぼ終わっています!とりあえずの所は俺が団長の後を引き継ぐ形になるんですが、強者が現れるまで団長の地位を俺が守ります!中継ぎみたいなものなんですが、諸先輩の顔に泥を塗らないよう頑張ります!」
ジェトロは隊員の中ではずば抜けて頭が良いやつで、俺の補佐として良く働いてくれた。正直言って俺が居なくても、ジェトロがいれば部隊はまわる。
「まさかお前、仕事を請け負ってまで俺に竜化の特訓をするように促したのは・・」
「だって、竜化が団長の夢じゃないですか!」
ジェトロはつぶらな瞳をキラキラさせながら言い出した。
「今日、団長の竜化によって、最強の若い竜が3頭揃ったんですよ?中央は我らが殿下が守り、南は長龍を抑え込んだ騎士団長の息子が就く。辺境伯が倒れて空になった北を誰が守るとなれば、団長以外にいないじゃないですか!」
私利私欲で俺から第一部隊を奪い取るってことじゃあねえんだな!単純に俺の新たなる門出を祝って、第一部隊を預かるってお前は言っているんだよな?
涙を流す俺の姿を見て、感極まった様子で部下たちが抱きついてくる。
俺の涙の意味を勘違いしているだろ?間違いなくお前ら、勘違いしているよな?
「お前ら!俺が出世して喜んでいるだろうと思っているんだろうけど!完全に勘違いしているからな!俺は・・俺は・・辺境伯になんかなりたくない!」
「またまたあ!」
「嘘ばっかり!」
「俺たちの事を気にして、そんな嘘をつかなくてもいいのに!」
嘘じゃねえ!俺にとって辺境伯は荷が重すぎる!
俺に辺境の領地経営なんて出来るわけがねえじゃねえかー〜―!
お前ら他人事だと思って!
殿下のばかーーーーーーーーっ!勝手に外堀埋めてるんじゃねーーーーーー!
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