夢のその先 2
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竜と化し、死力を尽くして巨大な長龍を押さえ込む。
辺境伯を追いかけたのは、自分もまたケジメをつけなければいけないと思ったから。
異界の雌龍がここまで王宮に深く食いこむ事になったのも、洗脳されていたとはいえ、俺が関わったからに他ならない。
ベルトルト・アバッティーニとして、父や兄に名を恥じない行いをしなければならない。
洗脳された俺は、近くに雌龍の複製を置き続けたが、貴族の男どものように欲情などはしなかった。
それが恥ずべき行いだと気がついていたから、あの親子が危険だと気がついていたから。時々、記憶が浮上する時には、苦しくて死にたくなる時もある。
アンジェラ嬢を捨てたのは俺だ、彼女の腕を断ち切ったのも俺だ。父が連れて行かれたのも、兄と共に馬車の事故と見せかけて殺されたのも俺の所為だ。
病の床につき、余命いくばくもない状態となった母は、俺の手を掴みながら言っていた。
「私は旦那様に恥じない選択をする、貴方も絶対にそうしなさい」
母はそう言って、俺の手を自分の額に押し付けたのだった。
選べる選択肢はあまりにも少なかった、常時、頭に靄がかかったような状態で、思考し判断するのが難しい。
だけど、あの時、番と一緒にいる彼女の姿を見て、俺は自分のなすべき事をようやっと理解する事が出来たのだ。
今の俺なら匂いを嗅げばそれだけで分かる、エリアルディオ殿下は貴女の番だ。
うまくいけば、人生に一度だけ顔を合わせるような存在。確かに、殿下はそれほど遠い存在ではある。だけど貴女は自分の番に出会えたのだ、これでようやっと諦められる。
泥のような塊の中で、俺はあの時、確実に死を覚悟した。
純白の糸にがんじがらめにされて、引き寄せられるように移動しながら、ああ、これでようやっと楽になれると思ったわけだ。
だけど・・・
「きゃああああああああ!ようやっと封印術がうまくいったと思ったのに!変なものを釣り上げてしまいましたわーーーーーー!」
腰の高さほどもある竜の牙で出来た剣を地面に突き刺した亜麻色の髪の女は、そこから伸びる力で俺を引き寄せて抱き上げたのではあるが、
「泥だわ!泥だらけよ!何で泥だらけなのかしら!呼吸はしているわよね?」
俺の顔を覗き込んでくる女の顔を見上げて、思わず掻き抱くようにして抱きしめる。
「ジュディッタお嬢様!それ!貴女の番ですよ!匂いでわかります!」
近くにいた男が大騒ぎをしているが、そんな事は気にならない。
ああ、俺の番、俺の番はこんな所にいたのだな。
どうやら俺はカタンザーロまで来てしまったようで、
「良かった!良かった!長龍はようやく寿命をまっとうしたようだよ!何かがこちらに移動してきたようだけど、何が移動してきたのかな・・・・」
領主のティモテオ・アメンタはギョッとした様子で、ジュディッタを離さない俺を見つめると、
「ジュディッタの番・・・」
そのまま泡を吹いて失神してしまったのだった。
俺の番はカタンザーロの領主の一人娘だったのだが、即座に俺は結婚を決めた。領主軍を率いる団長とかいう奴が文句を言ってきたが、拳で黙らせて、聖都がどうなったかの確認のためにケツを蹴り飛ばして向かわせた。
「ベルトルトさん、貴方、王都に戻らなくてもいいわけ?」
番の質問に、即座に戻らないと俺は答えた。
父も母も兄も死んだ。アバッティーニ侯爵家を継ぐ気は俺にはない。
一度、赤い竜体となって飛んできたエリアルディオ殿下が、
「ジュディッタ嬢と共に辺境伯領を継ぐという選択肢もあるんだけどね?」
と、問われた為、俺は即座にカタンザーロに残ると答えたのだが、
「なるほど、君はアメンタ家に婿入りする形を望むわけだから、南方の守備は君が担う覚悟が出来ているという理解でいいんだよね?」
と、殿下に問いかけられた。
パルマ公国は今の所、お化け騒ぎやら、屍の龍騒ぎやらで混乱状態となっていて、オストラヴァ王国は宗教的な意味でも踏み込んではいけない土地だと言い出している者までいるようだ。
殿下と同じく竜体への変化は出来るので、もしも奴らがとち狂って仕掛けてきたとしても、何とか出来るだけの自信が俺にはある。
「ジュディッタが家族と共に居たいと言う限り、俺はここに居ます。そして、ジュディッタの家族が被害を被ることになるのなら、俺は破壊と殺戮を選びます」
「その覚悟を違えるなよ?」
そう答えた俺に対して、殿下は恐ろしいような顔で笑みを浮かべた。
結果的に殿下の番を傷つけた俺は、おそらく半死半生にまではされるのだろうなと覚悟をしていたのだが、殿下はそのまま王都へと帰って行ってしまったのだった。
「すごい!殿下は竜に変化できるのね!」
俺の番は、嬉しそうに瞳を輝かせながら空を見上げている。
めちゃくちゃ気に入らない。
「俺だって出来る」
「えええ!ベルトルトさんも出来るの?鱗は何色なの?」
「鱗?」
長龍を押さえつける時に確かに竜体化していたが、自分の鱗が何色だったかなんて考えもしなかったな。
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