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新しい生と古びたものの死と  6

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

私が生まれる前から、俊君のお父さんお母さんは隣に住んでいたし、同じ年に私と俊君が生まれた時には、

「一緒に遊ばせましょうね〜」

と、約束する程度には、両親とも仲が良かったみたいです。


 私は作倉絢美、両親ともに平凡顔、娘の私も平凡顔。中小企業に勤める父とパートで働く母を持ち、完全なる一般家庭の人間で、弟が一人います。

 我が家のお隣さんはというと、お父さんが一流企業、お母さんがスウェーデン人と日本人とのハーフで通訳のお仕事をしています。息子の俊君はクォーターっていう事になるみたいですね。


 海外では日本みたいにハーフとかクォーターみたいな事を言わないそうなので、こういう言い方をすると俊君は不機嫌になるんですけど、とにもかくにも何が言いたいのかというと、海外の血が混じるとものすごーくイケメンになるって事です。


 一人っ子の俊君は私と兄妹のようにして育ったわけなんですけど、それが理由なんですかね、とにかく彼は、メチャクチャ私に執着してくるわけです。


 幼稚園の時に、

「俊くんの隣になんでこんなブスが居るわけ?信じられない!ブスは何処かに行ってよ!」

って言われた事があるんです。


 私、完全なる日本人顔(埋没系)隣、完全なる(異国情緒あふれる)イケメンですよ。ブス呼ばわりして離してやろう、そして自分こそがイケメンの隣をキープしてやろうってわけですね。


 正直言って、生まれた時から並べられて育っているので、今更ブスとかブサイクとか、隣にそぐわないとか、隣がイケメンゆえにかえってみっともなく見えるとか、んな事、子供だけでなく大人からも悪気なく言われ続けて来ているわけですよ。


『そんなに欲しいなら連れて行ってくれ〜』と、心の中で唱えながら、俊君の隣に立っていると、にこやかな笑顔を浮かべたままの俊君はその子に近づいて、

「アヤちゃんに失礼な事を言うな!」

と言いながら、その子のお尻を蹴っ飛ばしたんですよね。


 彼曰く、お尻には沢山脂肪が付いているから、少々蹴っ飛ばしても問題ないと。更には、こんな幼いうちから他人の容姿を堂々と人前で貶す人格に育てた親の教育はどうなっているのかと。このまま何の修正もかからず成長したら、とんでもない嫌われ者になると。小学校に上がったと同時にイジメの対象になると心配した為、自分が行動に出たとか。


「えええええー〜!」


 先生への説明にもドン引きしたけれど、お尻を蹴っ飛ばされて泣き出す女の子に一瞥もくれず私に抱きついて、ぐりぐりと頭を撫でだす行動にも驚きだよ。

「アヤちゃん!アヤちゃんは絶対にブスじゃないよ!アヤちゃんは可愛いんだよ!」

 俊君、俊君、周りも私もドン引きしているのがわからないかな?


 俊君の執着は衰える事を知らず、小・中・高と同じ学校に通う事になった私は、イケメンをはべらすブス、イケメンをこき使う悪女として名を馳せる事になったわけです。


 何せ、私がお弁当を忘れたと一言いえば、購買まで全力疾走する男だからね。どうやっても、私がこき使っているようにしか見えない。


 担任の菅谷美穂先生は、

「そういう奴ってたまにいるんだよ、諦めるしかないね」

と言ってくるんだけど、何を諦めると?


 高校は私立校なだけに、今まで顔を見た事もないような人達が集まっているわけで俊君の人気は爆発状態となり、私への憎悪もまた炸裂状態となったわけだけど、意外にも同じクラスになった女子たちは、そこまで私たちの事を気にしなくなったの。

 その理由は・・・


「先生!社会係に教材運ばせるにしても!物が多すぎじゃ無いですか!私一人では無理です!無理!先生も一部は運んでくださいよ!」


 地球儀と大きな巻物状となった地図と、その他、色々なものが突っ込まれた段ボールを床に置いたまま、職員室で騒いでいるのが橋本真那さんで、その真那さんを、くっつくほど椅子を引き寄せて並べながら、ほぼピッタリとくっついている二人の教師が、完全に無視しながらお弁当を食べている。


 私のクラスの担任教師である菅谷美穂先生はこの学校の同僚教師と結婚をしており、席も隣なら部活の顧問も一緒。常に一緒にいる夫婦教師として我が校の名物にもなっているのだった。


「先生、今日の部活の欠席者は三名です、ここに置いていきますね」

 先生たちの前に紙を置くと、

「橋本さん、私、持って行くのを手伝ってあげるよ」

と、怒り狂っていた橋本真那さんに声をかけた。


 学校内でもイチャついているようにしか見えない菅谷先生夫妻の存在と、クラス内で自分の父親がどれだけイケメンなのか、嬉々として話す橋本さんがいるお陰で、私はこの学校で息がしやすくなっている。


 恩返しのつもりで地球儀と巨大地図を持ち上げると、

「私!公然と衆目監視の中、平然とイチャつくカップル大嫌い!」

と、橋本さんが言い出したので、

「「私たちは、そんな事を求めているわけじゃない(のよ!)!」」

と、私と菅谷美穂先生は、ほぼ同時に同じ事を言い出したのだった。



 その後、橋本真那さんとは親友と呼べるほど仲良くなり、担任の菅谷先生は、俊君の私に対する執着具合が自分にも重なる部分が大きかったみたいで、とっても気にかけてくれたし、相談相手にもなってくれました。


 菅谷先生は、ファザコンが過ぎる真那の事もすごく気にして、時々、オカンみたいになって対応するのが面白いです。


 真那のお父さんには、私も何度かお会いする事になったんだけど、俊君がいつでも邪魔をしてくるので、長くお話をする事は叶いませんでした。

 真那のお父さんは確かにイケメンすぎるし、私が見る限り真那は完全なるファザコンなので、今後、恋人とか彼氏とか真那は作る事が出来るのかな?と、若干の不安を感じます。


 イケメンお父さんに良く似た真那は、めちゃくちゃ美人さんなので、俊君の隣に立つとめちゃくちゃお似合いのカップルみたいになるのですが、

「私、お前、嫌い!」

「アヤちゃん、なんで橋本さんの方を見るの?こっち見て!」

となるので、私が当て馬になって、二人が交際〜みたいなことにはなりそうにないです。


 私は地味すぎて、周りから『ぶさいく』とか『ぶす』とか言われるから、いつか俊君は目を覚まして、眩しくって目も開けられないような美人の彼女を作るのだろうな〜と思っていたのですが、そうなる事はなく、二人で初めてのお泊まりデートの際には泣いて、結婚式の時も泣いて、そうして、子供が生まれた時にも大泣きをして、

「ありがとう!アヤちゃんありがとう!」

と言いながら抱きついてくるわけですよ。


 そうして、綺麗な顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら、生まれたばかりの我が子を抱いて、言いました。

「名前はね、男でも女でも大丈夫なように決めていたんだ。アンジュ、この子の名前はアンジュ、杏樹って書くんだよ」


「アンジュ・・・」


 頭の中に一瞬、『安寿と厨子王』という悲劇的な運命に弄ばれる姉と弟の物語が思い浮かんだけれど、

「天使の事をアンジェラって呼ぶんだけど、愛称でアンジュとも呼ぶんだ。天使のような我が子には絶対に天使のような名前にしたくって」

夫があまりに必死になって説明するから、思わず吹き出して笑ってしまったの。


「アンジュ、素敵な名前じゃない?」

「そうでしょ?一年かけて悩んで考えたんだよ?」

 一年は長すぎじゃないだろうか?そんな事を考えていると、

「僕はね、もう、絶対に間違えたりしないから、一緒に幸せになろうね」

そう言って彼は私にキスを落としたのだった。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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