新しい生と古びたものの死と 2
お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。
「毎っ回!まずは最初に燃やし始めるのやめて欲しい!」
「熱い!アチアチアチアチアチッ!」
「燃えてる!燃えてるから!殿下!早くしてー〜!」
確かに熱い、熱いけど寒い、寒いけど熱い。
この奇妙な感覚と、周りから聞こえる悲鳴を耳にして、意識が浮上し、目を開けた。すると目の前に巨大な氷があったものだから驚いて、転がり落ちそうになってしまった。
私を抱えていたのは柔らかな何かで、これはまさに大きなお胸の感触です。
エリアさん、また女性になっちゃったのかしら?
分厚い胸筋もいいですけど、巨乳もやっぱりいいですよね!
「マウリ、ディオの番が目を覚ましたみたいだぞ?」
「うん?」
頭上に、大変麗しい顔立ちをした男女が現れました。あれ?これ、覗き込まれている?顔を覗き込まれているのかな?
「ご先祖様に憑依されていたんだろ?倦怠感は?吐き気は?マルサラはやっぱり幽霊系が得意だよな?」
まつ毛バッサバサの青髪の美人と、金環の瞳を持つ赤髪の美丈夫が私を覗き込んでおります。これはあれかな?かなりまずい状態なんじゃないかな?
「すみません!私!気を失っちゃった感じですかね?ご迷惑おかけしてすみません!」
王妃様に抱きかかえられていた私が起き上がると、すぐさま王様が王妃様を抱きかかえる。順番を待っていた猫みたい・・・って、王様は猫みたいに王妃様の膝に乗るわけじゃなくて、自分のお膝に乗せているわけだけど。
「えーっと、どうなっちゃいました?チャンスを作るとか何とか言っていたとは思うんですけど、かなりまずい状況なんじゃないでしょうか?」
周囲が炎に満たされる中、王妃様が作り出した氷に守られて私たちは無事みたい。
向こうでは、封印術でダニエラさんをがんじがらめにしながら、少しずつ、残った命を削り落としているみたい。
「ダニエラさん・・巨大な赤ちゃんになっちゃったんですね」
大人の身長の二倍の大きさになった巨大な赤ちゃんが、萎れるようにして倒れている。白色の糸を使って大人数で押し固めているので、到底逃げ出す事など出来ないだろう。
「最初はもっとデカかった、この宮殿の屋根に届くくらいの高さまで成長したからな」
王様はそう言って穴が空いた屋根を見上げているけど、ええええ?この高さまで成長したの?ちょっと想像出来ないんだけど?
『グォオオオオオオオオオオオオッ』
咆哮の声と共に地面が揺れるようにして波打っている。
異界の長龍が娘に力を送ろうとしても送れず、怒りの声を上げている。
周りは驚くほどの業火に包まれていて、屋根の穴から炎が噴き出す様が良く見えた。
こちらの方へ来ようと龍が動き出そうとしている。
屍となって幾月もの日々を越えてきた龍が、世界に穴を空け、時空に亀裂を入れながら進もうともがいている。
燃やし尽くされたダニエラさんの命は後僅か、その僅かの間に、きっと長龍はここまでやって来るだろう。
「エカテリーナさん!やっぱり!やっぱり!この古代遺物は必要だったじゃないですか!」
私は王様の前だというのにも関わらず、自分の小さなお胸の間に手を突っ込むと、異次元収納機能があるズタ袋を引っ張り出して、その中に手を突っ込んだわけです。
そこから取り出したのは、辺境伯家の開かずの倉庫の奥底に封印されていたものです。それは魔法陣が記された羊皮紙で、足元に広げると、そこから禍々しい力が溢れ出てきました。
これは、頭がとち狂ったご先祖様が、異界の龍の現物を見に行くために作り出した魔法陣であり、先祖の封印を潜り抜けるために百以上の特殊な紋が記されているだけに、絶対に複製が出来ない、この世でただ一つだけ残された古代遺物というものです。
私が広げた魔法陣に気がついた様子で、巨大な赤ちゃんが頭をもたげてこちらの方を見つめています。
やばい・・・見つかった。
「封印ゆるんでるぞー!」
「そっち引っ張れー〜!」
糸が引っ張られて再びダニエラさんは地面に沈みましたが、こっちもこっちで時間がないみたい。
「王様!王妃様!この陣を使って今から長龍の所に行ってきます!人柱の要領であの巨体を押さえて来ますから、後の事はお任せ致します!」
最後の最後は血印を入れていかなくちゃいけないのが面倒なんだよ〜!
親指を落ちていたガラスで傷つけて、羊皮紙に擦りつけるようにして自分の血液を書き入れていると、
「お父様とお母様と呼んでくれよ!」
と、王妃様が言い出し、
「お前は残れ」
と言って、王様が私の腕を引っ張りあげました。
「人柱が必要なんだろ?以前も七匹が柱になったとかなんとかなんだろ?だったら、この国のトップが二人揃って行ってやろうじゃないか」
「息子の番が死ぬくらいなら我らが行こう」
王妃様は興奮した様子で自分の掌に自分の拳を叩きつけ、私の腕を捕らえたままの王様が、何度も首を縦に振っています。
「いやいやいやいや!国のトップが死ぬ方が駄目でしょう!それに!この呪印はうちの一族伝来のものなんですよ!完成させるのは子孫じゃなきゃ駄目だってエリーナが言ってたし!」
「一族なら他にもいるよ」
いつの間に来ていたのだろう?
銀色の髪の人は、いつの間にか羊皮紙の前に這いつくばるようにして文字を書き入れていくと、
「さすが私の娘だ、こんな時にこんな大事なものを運んでくるんだから、さすが、私とベルタの娘だよ」
そう言って、紫水晶のような瞳を私に向けたのだった。
「良くやった、アンジェラ、良くやったね。私は本当に不甲斐ない父だったけれど、君の事は誇りに思っているんだ。後は私に任せて、番と一緒に幸せになりなさい」
火傷だらけの父は本当にボロボロで、片方の目なんか潰れてなくなっているのに、それでもしっかりと私を見上げると、今にも泣き出しそうな笑顔を浮かべたのだった。
「私は本当に情けない父親だったけど、君のような娘に恵まれて本当に幸せだった。ああ、ベルタ、迎えに来てくれたんだね」
遥か昔の人々が使っていたのが魔法で、その魔法が使えなくなって魔法陣が開発されて、その後はごく一部の人間が、先祖の作った魔法陣を使用することが出来るだけ。
父は見事に古代遺物を起動させると、溢れる光の中に母の姿が現れた。
死んでから私の近くに現れる事がなかった母の霊は、父に寄り添うようにして、私に向かって微笑んでいた。
だから幽霊なんか見たくない。
こんな姿は見たくない。
『アンジェラ、幸せになって』
光が溢れ出した瞬間、引き摺り込まれる父と一緒に、何かが後を追うようにして飛び込んだ。
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