聖女と魔女 2
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「パンドゥには七人の王子と百人の従兄弟がいた
パンタヴィア(異界の龍)にパンドゥ(世界の王)が殺された
黒くなり、黒く塗り、黒く混ざり、暗闇より暗い、黒いもので埋まる
紅くあり、赤く塗り、鉄のように混ざり、血の色より濃い血液で世界が埋まる
異なる力は理にそぐわぬ
聖なる言葉のみが通じる異質のものよ
戒めよ、戒めよ、戒めよ、戒めよ
パーンターヴァルの地に沈め
7王子の柱によって杭を打て
漏れ出た力も鋭く穿て
全てが終わらぬ限りは、何をも終わらん
戒めよ!戒めよ!戒めよ! 」
何のこっちゃ訳わからんという顔で、エリアさん、エリア君と言うべきでしょうか、いや、エリア殿下?が、私を引き寄せるように抱きしめました。
説明プリーズとか言われても、説明しようがないですよ。
何せ王妃様が、拍手がおさまったら歌えって命令するものだから歌っただけですし、最後が神聖語での『戒めよ』ですけども、何を戒めるのか、ちっとも分かっていないんです。
だけど、この会場が異様な雰囲気なのはよくわかる。
ネックレス効果で幽霊が見えなくなっているので、会場の中が実際どんな事になっているのか分からないけれど、ネックレスを外してみようとは思わない。
だって、私はもう幽霊なんか見たくないんだもの。
「気味が悪い」
幽霊と話す私を見て、嫌悪の表情を浮かべながら父が吐き出すように言ったのは、連れて来たダニエラこそが真実愛する人だと言い出した頃の事だっただろうか。
元々、交流がなかった父だけど、面と向かって言葉をかけられたのが初めての事で、その初めての言葉がこれだったから、グサーっと私の胸を貫いたのは忘れられない思い出になっているわけですよ。
私と母を捨て、ダニエラとの愛を選んだ父は、エリア殿下にエスコートを受ける私の遥か先を歩いていたんだけど、父の背はあんなに小さいものだったかと、びっくりしている自分が居る事にも気がついた。
その父が聖女として認められたダニエラの後方で剣を引き抜く際に、私の方を振り返って見たわけだ。
その目は、あの時みたいに蔑むものでは決してなくて、いつもみたいに愛情に満ちた、それでも何かを必死に諦めようとしているような、自分ではどうしようもない葛藤を抱いているような眼差しで、それでも必死に笑顔を浮かべながら、こちらに向かって小さく頭を下げたのだ。
私の隣にいる殿下に頭を下げたのか、私たちの前の方にいる国王陛下夫妻に向かって頭を下げたのか、それとも私に向かって頭を下げたのか、誰に頭を下げたのかがよく分からない。
謝罪の意味で頭を下げたと言うのなら、出来れば母に向かって頭を下げたのだと思いたい。結局、最後まで母は父を愛していたのだから、例え裏切られたとしても、最後の最後まで父だけを愛していたのだから、その謝罪は殺された母にこそ向けて欲しい。
剣を引き抜いた父は私の歌に合わせるようにして、ダニエラの背後から胸を貫くようにして剣を突き立てた。
彼女は胸を貫かれながら真っ赤な血を撒き散らしたけれど、苦しみもせず、嬉しそうに笑いながら父の首に縋りついた。
その父の体が見る間に変容をしていくと、銀色の鱗の巨大な竜へと姿を変えていく。鋭い爪で純白のローブを貫き、聖女の体を牙で貫きながら唸り声をあげる。
「ディオ!お前は弟夫婦を守れ!」
そう叫びながら陛下が豪華なマントを外すと、見る間に巨大な真紅の鱗の竜へと変じていく。
「マウリ!私も変じてもいいんだよな!」
王妃様は竜へと変じた陛下に声をかけると、王冠を放り投げ、履いていた靴を投げ捨てながら走り出す。そうして髪色と同じ藍色の鱗をした竜へと変じ、ドーム型の天井を破壊しながら咆哮を上げた。
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