それが番というもの 3
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王子妃である私、チェレスティーナは、近々王妃になる。
お腹の子も順調に育っていて、今は安定期に入ったわ。
「明日の披露目の宴でダニエラ様の聖女認定を祝い、私が王位を継承する事を発表することになる。父上は母上と共に離宮に押し込められて大喜びだし、王位など継ぎたい奴が継げばいいと言ってくれている。私は今まで何をバタバタとしていたのだろうね?呆れ返る思いでいるよ」
ソファに座っていた私の隣に腰をかけたルクレッツィオ様は上機嫌のご様子で、私の肩に自分の頭を乗せながら言い出した。
「兄には絶対に勝てないと言う呪縛に打ち勝つために、わざわざ兄に呪いをかけたり、王になるためにと派閥作りに力を入れたり、色々な事をやっては来たけれど、全ては無駄な行いだったのかもしれないよ」
ノストラトの戦いで大きな戦果を上げたエリアルディオ殿下は、王位継承への一歩を決めたような形となったけれど、殿下が戦争に明け暮れている間に、内政に力を入れていたのがルクレッツィオ殿下ですもの。
双子の王子のどちらを王太子とするのかを決めようとしなかったマウリッツォ国王陛下が、遂に王位継承を誰にするか決めたという情報を得た父が、私の夫となる殿下のために毒を用意したのが随分前の事のように感じてしまう。
普通の人間が飲めば一滴であの世行きとなる毒も、エリアルディオ殿下を殺すまでには至らず、殿下の体を女体へと変じさせただけで効果が切れる事となってしまったのだ。
直接的な毒物ではなく、呪物を含んだものだったが為にそんな事になってしまったらしく、王宮の自室に引っ込んでいた殿下はそのうち、王宮から姿を消してしまったの。
オストラヴァ王国では女性の王位継承は認めないと法律で決められている事もあって、女性でいる限りエルアルディオ殿下は王位を継承する事は出来ない。
マウリッツォ陛下はすぐさま、王位継承をルクレッツィオ殿下にお決めになるかと思いきや、なかなか決定を下さない。
そうしている間に、私の懐妊が公となった事もあって、お父様とルクレッツィオ殿下は強硬手段に打って出る事にしたのだった。
北からは再びクシャダス帝国が牙をむき、南からはロンバルディアの信者の支援を受けたパルマ帝国が、我が国への侵攻を開始しようとしている。
王国軍の主要な部隊は北と南に移動をし、王都ヴィアレッジョは近衛と第五部隊が守りにはいる事になった。
第五部隊は騎士団長であるアバッティーニ侯爵家の指揮下に置かれていた事もあって、王都の戦力は公爵家の支配下に置かれたも同じこと。
近衛部隊は王家を守るために存在するため、陛下の意思に従って、今は静観を貫いている。そもそも、今は戦時下と言っても過言ではない状況でもあるため、やる気がない陛下には退位を促し、ルクレッツィオ殿下には早急に王位を継承してもらいと考える貴族は驚くほど多い。
聖女の後ろ盾を持つルクレッツィオ殿下が新たな王となれば、オストラヴァ王国はこの先も千年は続くと言い出す王国民もまた多いのだ。
「お二人は明日のパーティーには参加されるのかしら?」
この状況にまで追い込まれれば、いかな陛下といえども、やる気のないままではいられない。
「今までは、息子のどちらかが王位を継承するのだから何の問題もないと言い続けていたのだが、ここに来てようやっと、王位を息子に継承して自分は退位する事を決意したと言い出すようになってね」
今まで、王宮に引きこもっていた王様も、ようやく自分の権利を完全に移譲する事をお決めになられたのだろう。
「近衛もそのまま変わらずですか?」
「彼らの仕事は王家を守る事だからな、守る対象が父上や母上であり、私たち夫婦である事に変わりはないんだよ」
「そうですか・・・」
竜人の血を引くオストラヴァ王家は強いが正義、頭の中身が筋肉で出来ているとも言われ、最強の力を持つ者こそ王位を継承するべきだと言い出す貴族は今でも多いのが現状だ。今代の国王がやる気がなくても、完全なる先祖返りと言われるだけの人物という事もあって、軍属の人間であればあるほど、国王陛下への忠誠は高いし、武辺の誉高いエルアルディオ殿下を推す声も大きくなる。
派閥の力が全ての貴族社会において、貴族派と軍属派との間の衝突は永遠の課題といったところもあるのだけれど、騎士団を今までまとめ上げてきたアバッティーニ侯爵家やマルサラ辺境伯がこちら側となった事で、絶対的に有利な立場になったのは言うまでも無い。
「番追放政策がうまい具合にはまった感じですわね?」
力ある人間は自分の番を見つける場合が多く、番を見つけた人間は番こそ全てという状態に陥ってしまう。番を守る為といった理由で法を破るような事も良く行われる。
そもそも、番では無い相手を自分の番であると宣言し、最後には捨てられる女性の被害もかなりの数に登る事もあり、番と名乗る者は王都からの追放を決定する法案を通す予定でいるのだ。
この噂を聞いたからだろう、番だと自認する人々の多くが王都から離れた事もあって、力ある者が王都から居なくなった。つまりは、強引に王位継承を進めても、力ある者がいない状態となっている為、反対意見を抑えるのは簡単になるというわけだ。
私たちは番ではないと散々言われて来たけれど、番じゃなければなんだと言うわけ?この世の中には番じゃない夫婦が山のように居るのよ?
国王夫妻のように番じゃ無い事を揶揄され、馬鹿にされる事も多かったけれど、それもおしまい。この国からは完全に番を排除していくつもりなんだから!
「チェレスティーナ、お腹の子供と共に、私を支え続けてくれるかい?」
「ええ、もちろんですわ!」
私たちは口付けを交わし合った。
ああ、もうすぐ、私たちが王と王妃となって、民の祝福を受ける事になるのね!
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