竜の力 3
お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。
異界の竜は我らと異なる力を使う。
気をつけろ、気をつけろ
同じ容姿でも中身が違う
顔を合わせれば、己の全てを乗っ取られる
奴らの鋭き爪は魂を引き裂き、
大切なものこそ食い殺される
気をつけろ、気をつけろ
異界の竜に気をつけろ
先祖の霊の言葉を忘れた訳ではない。
だけど、小さな村の片隅にある旅籠で、みすぼらしい格好をした親子を見つけた時に、頭を覆い尽くすかのような靄に包まれて、何もかもがわからなくなる。
私の真実愛するのは、鮮やかなピンクブロンドの髪を緩やかに結んだダニエラと娘のビアンカであり、それ以外のものはこの世に居なくても良いものとなる。
ベルタの遺体を運んできた女は艶やかな笑みを浮かべながらこう言っていた。
「竜人同士の番って本当に鬱陶しい、見苦しい、自分達は尊いと思っている至高のラブとやらを、まざまざと見せつけられるこっちの気持ちを、ま〜ったく分かっていない鈍感さがまた癪に触るのよね!だから、番同士を破滅に導いた時にようやっと!ようやっと!私って生きているって実感できるのよね!」
腱という腱を切られ、糸が切れた操り人形のようにぶら下げられたベルタの遺体を前にして発狂寸前となる私の顔を覗き込みながら、ダニエラと名乗る女が嬉しそうに笑う。
「ここの領地の人間も、血が濃いだけに操るのには苦労したけれど、今まで奥方様とか何とか言って敬い慕い続けた領主夫人をあっさりと殺して、殴る蹴るの暴行を加える姿は笑えたわよ!この時代の人間って本当にチョロすぎー〜!」
女はベルタの周りを楽しそうにぐるぐる回りながら言い出した。
「ああああー〜!番って本当に嫌い!相手しか見えないっていうところがウザイ!これだけ洗脳しているのにまだ屈服しないものねぇ?絶対に私のものにはならないって所がまた!あいつを思い出させてウザイ!本当にウザイ!」
そうして女は私を殴りつけ、ナイフで何度も私を刺し、ベルタを刺しながら言い出した。
「本当にウザイ!本当にウザイ!番は滅びろ!滅びてしまえばいいのよ!」
がんじがらめに縛り付けられて動く事が出来ない、女が近づいてきて再び思考が停止した。ベルタが死んだのは私の所為だ、だがしかし、お前の事も絶対に許さない。
洗脳によって破滅へと導いたお前を、絶対に、絶対に許さない。
夕暮れが闇の中に沈み込み、明かりが灯らない室内が冷たい外気によって室温を下げる。
暗闇に沈む部屋で一人椅子に座っていた私の元を訪れたダニエラは、嬉しそうに部屋の中でクルクル回りながら明かりを灯した。
「ねえ!コルネリオ様!聞いて頂戴!ようやっと王家が私を聖女だと認める事になったみたいでね!一週間後に行われるパーティーで!私を聖女として認める儀式を行うと共に、次期国王をルクレッツィオ殿下で決定だ〜っていう事で発表されるのですって!」
ダニエラは私の膝の上に飛び乗り、私の胸に頬擦りしながら、
「辺境伯夫人の私が聖女になれば鼻高でしょう!」
と、嬉しそうな声をあげる。
そうして私の顔を見上げたダニエラは、
「あら?ロンバルディアからの力が弱くなっているのかしら?」
と、独り言を言いながら小首を傾げて見せた。
異界の竜はこの世界に満る大地の力は使えない、自然に馴染む形で広がる魔素も吸収できない。だから、人の生気を吸収して己の力としているのだが、ダニエラの拠点の一つでもある聖都で何かがあったが為に、私の洗脳が解けたのだろう。
「聖女を認定というけれど、遅すぎるくらいじゃないのかい?」
私は洗脳が解けた事を偽るため、彼女の額にキスを落としながら蕩けるような笑顔を浮かべた。
「そのパーティーというのも一週間後だと言うんだろう?こちらを馬鹿にしているのかな、君に素敵なドレスを贈ることが出来ないじゃないか」
「私にキスを落とすなんて初めてじゃない」
ダニエラはキスを落とした額を手で触れながら嬉しそうに笑う。
その瞳が疑惑を浮かべて、禍々しい力で渦をまき始める。
私はキスなど落とさない、ベルタ以外には、絶対に。いつでもキスをするふりをするだけ、傍目にしているように見えればそれでいい。
「愛しい君のことを考えない日はないよ」
だけど今は、実際にこの女の頬にキスを落としながら、甘い瞳で顔を見つめる。
「どんなドレスを作ろうか?」
「一週間でも素晴らしいドレスは出来ると思うのよね!」
疑惑を払い退けたダニエラははしゃいだ声で立ち上がる。
年齢不詳の異界の竜は、先祖の霊曰く、人にのり移りながら長い生を生きているらしい。必ず身近に自分の複製品を一体置いて、何かあった場合にはそちらの方へと移動する。過去には魔女と言われたダニエラは、当時の聖女に消滅寸前にまで追い詰められたらしい。
だけど、最後の最後には、近くを通りかかった母体の中にいる胎児に乗り移る事に成功した。その為、今は自分こそが聖女、自分を滅ぼそうとした女こそが魔女であったと聖教会を使って喧伝し、聖地巡礼として自分が作り上げた魔法陣の上を移動させて、巡礼者の生気を吸うことで自分の力としているような状態らしい。
今ある姿は年齢を重ね過ぎた為、次の体へ移動する必要があるらしい。そのため最近、聖都では、若い女を生贄として利用しているとかいないとか。
生贄の儀式を聖なる地で行うのも、神聖なるものに唾棄する彼女の習性そのものだし、番を見つけては破滅に導くのも、彼女のライフワークそのものであったりする。
「コルネリオ様、私の事を愛してる?」
「愛しているよ、ダニエラ」
唇を重ねながら抵抗のために目を閉じる。
どうやったって、披露目のパーティーには出席しなければならないのだから。
ここまでお読み頂きありがとうございます!
モチベーションの維持にも繋がります。
もし宜しければ、☆☆☆☆☆ いいね ブックマーク登録
よろしくお願いします!




