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竜の力  2

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 私は一族の中で一番の力を持っているだけに、山岳を越えようとする部隊の規模の大きさについては、情報が入る前から知っていた。

 帝国は本格的にオストラヴァ王国を潰しにかかるつもりのようで、そこが主眼ではないとしても、ノストラト平原にも大規模の軍隊を展開していた。ノストラトに王国軍の主力を集めている間に辺境であるマルサラを押さえれば、王国は窮地に陥る事になるだろう。


「兄上、ノストラトには辺境伯の嫡女であるアンジェラを旗頭として連れて行く事にする。我らの命にかえても守り続ける事を竜の神へと誓おう。だから、兄上にはマルサラの守護を頼みたい」


 弟は、ベルタが私の番だという事は知っているし、ベルタが辺境伯領に居る限り、私がこの地を守る事も知っている。この戦は王家が出てくるほどの大規模な戦いとなるため、マルサラ辺境伯家としては一族で戦いに参加する必要がある。


「娘のアンジェラを、お前が死んでも守ってくれるのだな?」

「あの娘は次期当主だぞ!任せてくれ!」


 弟は、領地防衛のための兵三百のみを残して移動を開始した。

 私はベルタを守るために兵三百を丸々温存し、一人、敵を迎え撃つために山の中へと進んでいった。パヴィアナ山脈の尾根を越えてくる兵士の数は八千、山岳部に住み暮らす部族の力を借りてもこちらは五百程度の数にしかならない。


 敵を退けるのには消耗を重ねたが、一族で1番の力がある私であれば、たかだか八千程度の帝国人、殲滅するのに何の問題もないとは思ったものの、敵を敗退させた際にはそれなりに傷つき、私の帰還を出迎えたベルタは涙を流して私を抱きかかえた。


「ベルタ・・私の番・・愛する君を守れるのなら、私はいつ死んでも構わない」

「コルネリオ様!死なないで!私を置いて死なないで!」


 泣いて縋るベルタを抱きしめながら、ようやっと彼女を手に入れたような気持ちとなって、私は涙を流し続けた。


 ノストラトでの帝国軍との戦いは想像以上の激戦となり、弟やその子供たちが戦死をしてしまったのだ。弟は私への誓いを守ってアンジェラを最後まで守り続けてくれたのだが、弟をマルサラの守護に当てて、私こそが戦いに出るべきだったのかと後悔に最悩むことになった。

 ただ、山岳を越えた帝国兵を討つのは想像以上に苦戦を強いられる事となった為、もし弟や配下の部隊に任せていた場合は、マルサラが占領されていた可能性も大きくなる。


「コルネリオ様、絶対に何かがおかしいです」

 弟の副官が涙を流しながら訴えた。

「竜の力が発揮できなかったのです、竜の力さえあれば、我らがあれほど苦戦する事などなかったのです。何かがおかしい、帝国には何かがあるのではないかと皆が皆、言っております」


 マルサラ辺境伯領は血にこだわる、竜人の血が色濃く残る地とも言われていて、特殊能力を持つものが今の時代にも多く残っている。

 その力が発揮できない、それは山岳での戦いでも私自身が経験した事だ。

「エルアルディオ殿下がいなければ危ないところでした、本当に危ない戦いだったのです」

 王家もまた竜人の血を色濃く残している、特に今の国王と王妃は先祖返りだと言われている。 


「あなた、大丈夫?」

 心配そうに顔を覗き込んでくるベルタを抱きしめる、私の番、君さえいれば私は何もいらない。

「何かがおかしいんだ」

 そう、何かがおかしい、本当に何かがおかしいんだ。

 

 愛する妻と、やっと心が通じ合ったと言うのに戦後処理が忙しすぎて、娘のアンジェラとまともに話す事すら出来ない。

 今までまともに声をかけていないのに、何を今更と思うかもしれないけれど、私は娘に幸せになってもらいたい。心底幸せになって欲しい。


 王国の武辺ある者は竜の血が濃く残ると言われていて、強者にこそ心震わせる、強者にこそ魅了されるという特性がある。

 弟や甥たちの葬儀を済ませた丁度その頃に届いたのが、アバッティーニ侯爵家からのアンジェラに対する婚姻申込書だった。

 侯爵家の次男となるベルトルト殿がノストラトの戦いでアンジェラを見染めたらしく、次男という事もあり、当家に婿入りという形でも良いから婚姻を望んでいるという事だった。


 婚約者候補だった甥たちが戦死し、娘の伴侶としてめぼしいと思われる男性は、まだ見つけられていない。

 騎士団長の職を務めるアバッティーニ家に悪い噂もなく、息子たちの評判も耳にしている。終戦後、一度王都に戻ったベルトルト殿が、自分の熱意を見せるために私の元までやって来たのだが、この人であれば大丈夫だろうかと考える。


 ただ、ベルトルト殿は娘の番では決してない。番同士は魂の匂いが似ているから、竜の血が濃ければ濃いほど、その判断を間違う事はない。


「すぐに決める必要もないでしょう?」

 思い悩む私をベルタは抱きしめながら、優しく声をかけてくれた。

「交流を深めて、お互いに合うか合わないかを判断してから、結婚するかどうかを考えてみたら良いじゃないですか?」


 ベルトルト殿が求めているのはアンジェラが強い異性だからだ。

 番ではないのだから、途中で気が変わる事も十分にあり得るのだから。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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