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竜の力  1

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 建国の王であるフェリチャーノは全身を鎧で覆った無骨な騎士としても有名で、彼を描く絵画には必ず、身の丈ほどの長さのロングソードが描かれる。

 聖戦に彼が参加したのが45歳の時の事で、様々な力を取り込む事が出来る彼は、武力だけでなく、多種多様な魔法を使って戦を勝利に導いたとされている。


 失神したアンジェラを抱きしめた僕は、夕暮れに染まり上がっていた空が徐々に漆黒の闇の中に落ちようとしている様を竜の骨の中から眺めながら、森の木々の中を無数の白骨死体がついて来る事に気が付いていた。


 幽霊が見えるアンジェラは、ネックレスをつける事で幽霊自体を見る事が出来なくなったのが視覚を共有している僕には良くわかる。

 幽霊に埋め尽くされた異様な世界は明確に遮断されたあとに発現したのがこの力、これらの骨は僕の意思によっても動かせるようだ。

 僕が乗る骨以外にも、近くから三体の竜の骨が現れた。

 明確な意思を持って従う無数の骨に向かって僕は命じる事にしたわけだ。


 この地にあるものを踏み潰せと。


 王国と公国の間に挟まる形で存在する聖都ロンバルディアは、双方にとっても曰く付きの場所となるのは明らかだから。



       ◇◇◇



 精神を絡めとる戒めが外れ、頭の中の霞が晴れて明瞭となっていく。

「ベルタ・・・アンジェラ・・・」

 ピンクブロンドの髪を結い上げた可憐な顔立ちの愛しい妻と娘の姿が見る間に変容し、新緑の髪に翡翠色の瞳をした、凛とした美しさを持つ妻ベルタと、妻と同じ髪色に私と同じ紫水晶の瞳を持つ娘の姿が脳裏に思い浮かんでくる。


「ベルタ・・アンジェラ・・・そうだよ、私の妻はダニエラではなくベルタ、娘はビアンカではなくアンジェラだ」


 妻のベルタはルッジェーロ伯爵の娘であり、本来は私の弟に嫁ぐはずだったのだが、顔合わせの為に辺境領を訪れたベルタを見染めた私が、奪い取るようにして我が妻としたのは間違いようのない事実。


 辺境領はクシャダス帝国と国境を接するため帝国軍との衝突も多く、当主は一族の中で一番の強者が継ぐ事になる。竜人を祖に持つだけあって強いが正義、いくらやる気がなくとも、強いだけで一族の長へと祭り上げられてしまう。


 今の時代に強いが正義もどうなんだと、一族を率いる事が出来る奴が当主をやるべきだろうと主張して、爵位は弟に引き継がせる予定だったというのに、弟を補佐をする事も見込んで嫁入りするはずだった女を奪い取ってしまった。


 だって彼女は私の番だから、弟なんかに渡せるわけがない。

 先祖返りとは良く言ったもので、先祖の血が濃ければ濃いほど、竜人の特性が色濃く現れるようになるもので、私はベルタを初めて見た時に、番を見つけた興奮で我を忘れてしまったのだ。だから・・・


「やはり、当主の座を弟君に譲られるのが惜しくなったのですか?」

 乱れる褥の中で、腕に抱いた番は絶望を露わにして私を見上げる。

「先代は私の伴侶が次の辺境伯だと宣言されました。だからこそ、貴方様は私に手を出したのでしょう?」

「違う・・違う・・そうじゃない」


 面倒臭くて当主の座を自ら弟に明け渡そうとしたのは私自身だ。その私自身が、当主の座を手に入れるためだけの理由で、無理やり貴女を手に入れたわけじゃない。

 貴女が私の魂の伴侶だから、私が貴女を心の底から愛しているから、無理やり貴女を自分の物にしてしまったんだ。


 そう説明しようとしたけれど、彼女の流す涙を見て思わず言葉を飲み込んだ。

 番がわかるのは竜の力を持つ者だけと言われている。私は貴女こそがたった一人の自分の番だとわかるけれど、貴女にはそれがわからないのかもしれない。

 番が分からない貴女は、私ではなく、本来嫁ぐ予定であった弟の方を愛していたのだとしたら?だとしたら、私は貴女と愛する人を引き裂いた悪者になるのではないのか?


 それなりに顔形良く生まれでたのが理由で、私に憧れのような思いを抱いている者が数多く居るという事は知っている。だけど、そんな有象無象の人間が、嫉妬と憎悪から、彼女を傷つけるような言葉を吐き出し続けているなど知りもしなかった。


 曰く、ベルタに手を出したのは、私が辺境伯当主の座に未練を感じてしまったからに違いなく、愛情など何もない。便宜上、弟から奪っただけ。優秀な弟を苛立たせるために手を出しただけで、本当は関心の一つすら持っていやしない。

 あれほど美しいコルネリオ様が貴女程度の見かけの女に興味など持つはずもない、優秀なだけが取り柄の貴女は鏡の一つでも見て、自分の立場を弁えた方が良い。


 華やかさとは別にはなるが、凛とした美しさに心底惚れていた私は、ベルタが自分の容姿を引き合いに出されて、酷く貶められているなどとは知りもしなかったのだ。


 私の愛した番が真実愛しているのは他の男だと言うのなら、私は番の幸せこそ最優先としよう。辺境伯は継いでしまう事となってしまったが、今まで通り無能であるとアピールし、爵位を弟に譲渡すれば・・だけど、番を弟に渡す事など出来やしない。アンジェラが生まれた後も、どうすれば良いのかが私には分からない。


 そのうち弟も結婚し、何人もの子供に恵まれる事になったので、私は心の底からホッとした。ああ、これでベルタを弟に渡さなくて済む。


 だけど、ベルタの心情を考えたら苦しくなる。愛した男が別の女と結婚して幸せに暮らす姿を、彼女はずっと見続けなければならないのだ。それは苦しい事だから、離縁を申し出て彼女を解放させてあげれば良いのか・・だけど彼女は私の番、決して傍から離したくない・・彼女は魂の伴侶なのだ。


 帝国との小競り合いは続き、戦争孤児や寡婦が増える中、私が支援に力を入れれば、無数の愛人を抱えている等と陰口を叩かれるようになった。その陰口がベルタの耳に入り、少しでも嫉妬をしてくれれば私にも望みのカケラくらいはあるのかと思ったけれど、ベルタは淡々と仕事をこなすだけ。


 自分の妻を抱きしめたい、娘を抱きしめたいと思いながら、彼女たちの幸せを考えて、いつかは手放さなければならない事を考えるのなら、距離を縮めるわけにはいかない。


 私が馬鹿馬鹿しい葛藤に苦しんでいる間にクシャダス帝国との戦端が開かれる事になる、敵が真に狙うのはマルサラの地。ノストラト平原での衝突は囮に過ぎず、山脈を越えた帝国軍は、がら空きとなったマルサラ辺境領を完膚なきまでに叩き潰すつもりで兵を配置したのだった。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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