絶望の果てにある力 8
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3箇所から放たれた矢はまっすぐに僕たちを狙う、すぐ様、腰の剣を引き抜き、放たれた矢を切り払うと、森の中へと突進するように突っ込んだ。
途中からパルマ軍の兵士がこちらを尾行している事には気が付いていた。中立を掲げる聖教会の信徒がパルマ側についた事に気が付かず、聖都を訪れた巡礼者の数は多い。
破壊された馬車や、巡礼者の衣服、旅で使用した食器などが至る所で散乱している惨状を見るに、巡礼者が聖都で蹂躙されている様は容易に想像できた。
こちらを追いかけてくる兵士のほとんどが新兵のようで、無敵になったような感覚に浸り、他者を貶め征服する快感に酔いしれているのは言うまでもなく、のこのこと聖地まで現れた女二人を辱め、快楽を得ようと興奮を隠しきれていない。
矢を射ってきた右方向からの圧はそれなりのもので、腕に覚えがある手練れが揃っているのは間違いない。それ以外は完全なるずぶの素人。
彼女は手練れだから、少しの間であれば置いておいても大丈夫だと思ってしまったんだ。
「な・・・!」
「やめろ!」
先の尖った石の礫を投げつけながら、敵に迫り、剣を振り抜く。
斥候部隊は機動性を重視するため、装備は軽い。鎖帷子をつけていると言っても気休め程度のもので、胸を突き刺し、喉を切り裂けばあっという間に倒れ伏す。
最後の一人を屠るまで一瞬、逃げ出した人間は一人もいない。
「あああ・・服がえらい事になってるな・・・」
いつの間に元に戻っていたのだろう、着ていた衣服が破れ、酷い有様になっている。一番偉そうな奴が身に纏っていたローブを剥ぎ取り、身につける。
「アンジェラの所へ戻らないと」
戻った時には、僕の呪いについて説明しなければならないだろう。
彼女だったら信じてくれると思うのだが。
剣を一旦、鞘に収めたその時に、グラグラと地面が横に揺らぐようにして動き出す。
完全なる僕の不覚だ。
まさかあんな事になるなんて。
あんな事になるのなら、その場を離れたりなどしなかったのに。
◇◇◇
250年くらい前に聖戦が起こったと言われています。どういう事が起こったのかは知らないんですけどロンバルディア聖国が滅びることになって、多くの聖国人が命を落としたのだそうです。
その死者の多さから、この地は神の怒りをかった土地とも言われるようになり、草木も生えない不毛な大地はその説を後押しする形となったわけです。
何が言いたいのかっていうと、とにかく幽霊の数が多かったんですよ。
視界を塞ぐほどの量っていうんですかね、物凄い量の霊体が溶けて混ざってグジョグジョっていうんですかね、霊圧が凄いし、視界から入る情報量が多すぎて頭が痛くなってきます。
だからですかね、視界が不明瞭ゆえに、敵がそこまで近づいている事に気が付かなかったんですよ。言い訳になるかもしれないですけど、それだけここが異常な土地って事で、ネックレスによって視界が鮮明になる事でようやっと、私は自分の危機的状況に気がついたってわけです。
「女の姿を見たなんて言うから最初は何の冗談かと思ったけど、本当の本当にいたじゃん!しかも結構可愛い系?俺は全然ありだね!」
「修道女の連中はババアばっかりで食指も動かなかったけど、これはありでしょう!だけどあれ?巨乳は何処に行った?」
「カステロ隊が矢で傷を負わせるとか言っていたけど、矢何処いった?全然当たってないじゃん?」
「つか、矢とか必要なくない?健康体の方が長持ちするし、俺たちの相手も存分にしてくれるってわけだし」
若い!若い!若い!パルマ公国軍の中でも若い部類に入る兵士たちだね!
辺境領にも荒くれマナー悪い系がいるけど、はっ倒して躾直したりしていたよ?だけど、だけど、ちょっと人数多くない?何人いるのよ?暗がりからゾロゾロやってくるんだけど?
八人?いや、十人?
「マジ信じられねぇ!巨乳がカステロ隊に攫われてんじゃん!俺!巨乳狙いだったのに!」
エリアさんが近くに居ないのは攫われたから?
ネックレスの衝撃が強すぎて気が付かなかった!っていうか、どうしよう!他勢に無勢だったらいくらエリアさんが強くても襲われちゃう!
「でもよくね?後で混ざればいいわけだし?今はこっち相手でも十分に楽しめるでしょ?」
一人が剣帯を外してトラウザースをおろし出す。
もう一人が私の肩に手を伸ばし、エリアさんがかけたローブを地面の上に敷きながら、私の肩を掴んで押し倒していく。
待って!待って!待って!
欅の木の葉が屋根のように広がり、男たちの下卑た笑みが視界を覆う。
「ちょっとこいつの呼吸やばくない?」
「過呼吸?じゃあ、やっぱり処女か?」
「誰が一番いく?」
あああああああああああああ!
腕がね、跳ね飛んだの。
バシュッと斬られて跳ね飛んで、真っ赤な血液が飛び散ったわけよ。
その時も、こんな風に男たちが近づいてきた。
パルマ人じゃない、うちの領地の人間だよ?
容赦無く伸びてくる手が衣服を引きちぎり、血塗れになって笑うその顔が狂気に満ちていた。それで・・・それで・・・
「ああああああああああああ」
地面から伸び上がる白くて鋭利なものに、周りの人間が貫かれていく。私を包み込むその骨は竜の肋骨で、白い骨の檻に囲まれるようにして体が浮いていく。
地面から無数に出て来たのは白骨の手で、ゾロゾロと白骨の死体が地面から湧き出し、パルマ軍の兵士たちを惨殺していく。
『幽霊が見えなくなるように一つの蓋を閉める事で、別の蓋が開く事になるの。その蓋が開くとアンジェラは死霊使い(ネクロマンサー)となって、その地に埋もれる人々や竜の力を使うことができるようになるの』
私に良く似た顔立ちをした幽霊のエリーナさんは言っていた。
『私の子孫だもの、私と同じ力が使えて当然なのよ?』
死霊使い(ネクロマンサー)って死霊を使って何かの魔術を行うのかと思っていたんですけど、骨を使う系だったんですね?知らなかったですよ!
「アンジェラ!」
竜の骨格は巨大で、私は肋骨の中に包み込まれるようにして座っているんですけど、その骨と骨の間から飛び込んできた何かが、私をぎゅうぎゅう抱きしめながら言いました。
「大丈夫?大丈夫?何処か怪我をしてない?僕がちょっと離れたばっかりに!こんな骨に囲まれるような目に遭って可哀想に!」
「だ・・だ・・だ・・誰?誰?あなたは誰?」
「僕だよ!僕!エリアだよ!」
「エリアさん?」
短く切った深紅の髪、男らしい額、形の良い鼻梁、金環が残る琥珀色の瞳はエリアさんと一緒だけど、腹に響くような男らしい美声、引き締まった口元。見るからに引き締まった体躯を漆黒のローブで包み込んだその人は、私を見つめて蕩けるような笑みを浮かべる。
思わず全身に震えが起こりましたよ。
「嘘つかないでください!」
「え?」
「嘘です!嘘!あなたはエリアさんではありません!」
エリアさんは髪の毛が長くって、不器用ゆえに後一つに括っていて、巨乳で美人の女戦士なので、こんなにゴツゴツした体格の男性では決してないのです!
「なっ・・なんで?エリアじゃないって、一体いつバレてたの?」
「いつバレたじゃないですよ!」
ここに飛び込んできた時点でバレているって言うんですよ!
竜の骨は私を包み込んだまま森の中を進み始めていますけど、そんな事を気にしている場合じゃありません。この男は誰?漆黒のローブはパルマ軍の将校クラスが身に纏っているものだよね?パルマ人には見えないけど、パルマの間諜?もしくは暗殺者?
「そんな目で見ないでよ!ごめん!ごめんなさい!確かに名前を偽っていたのは確かだよ!僕の名前はエリアルディオ・オストラヴァ、エリアは呪いを受けて女体となってから付けていた偽名で、決して君を騙そうとかそういう事じゃないんだよ!」
「はあああああああ?」
エリアルディオ・オストラヴァって王国の第一王子の名前でしょ?
「呪い?呪い?」
私はその場で気を失った。
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