絶望の果てにある力 7
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聖都は神の怒りを買った土地と言われるだけあって、草木が育たない不毛の土地だ。水が汚染されているため、衣類を洗う事には使えても、飲み水として使用する事が出来ない。
唯一、飲料が可能な湧き水が湧き出ているのが聖堂の後に広がる泉であり、その泉から広がる地下水が影響しているのか、その周囲にだけは、こんもりとした小さな森が、ぽつりぽつりと存在する。
幽霊に尋ねれば、何処に敵軍がいるのか事前に知る事が出来るんだけど色々と難しい。
この地は、泥沼に沈み込んだような、恨みつらみを抱えて死んだ霊の塊が山のように存在していて、悪霊とか死霊と言われるものが多い場所だからこそ、力あるものが声をかけてくる。
こういう場所では、嘘をついて罠に嵌めようと考える奴もやたらと多い。おばあさんの幽霊にしても、ミスト君にしても、あちら側に得なことがあるからこそ、こちらに協力してくれるのであって、双方の間に対価がなければ信用が出来ない。
そんな話をするとエリアさんは目をキラキラさせて喜ぶんだけど、これだけの泥沼のような霊の塊を相手にして、好奇心で心を躍らせるその性格が今は羨ましいよ。
幽霊のエリーナが言っていた場所と、それなりに信用がおけそうな幽霊の誘導に従って、途中で馬を降り、崩れた建物の間を進みながら、北方に位置する小さな森を目指して二人で進んでいく。
聖堂からは離れたその場所は小さな丘の上にあって、古い欅の木の下に小さな祠があった。
「アンジェラ、幽霊が言っていた場所ってここでいいのかい?」
「そうだと思います」
私に触れているエリアさんは私と視覚を共有しているので、幽霊に取り囲まれたこの場所の異様な雰囲気には気が付いているだろうに、なんで平気な顔をしているのだろうか。
カタンザーロの地下神殿へと通じる回廊を進んでいる時と同じように霊圧が強く、息をするのも苦しいのに。
エリアさんの後にいるロングソードを持った騎士の幽霊も平気な顔をしているので、こういう事には影響を受けないのかも。
「大丈夫、君は座っていて、僕が祠の下を掘ってあげるから」
こんな時のエリアさんは美人なのにジェントルマンだ。
自分の着ていたローブに私を包んで欅の木の下に座らせると、小型のナイフで祠の下を掘り始める。そのエリアさんの後にいる騎士の様子から察するに、敵が近付いて来ているのだろう。
早く見つけて早く移動しよう。
幽霊なんかもう見たくない。
幽霊だけでもうお腹がいっぱい。
幽霊から教えてくれる情報で助かる事もあったけど、騙される事も同じくらい多かった。
肝心な時に助けてくれるのは幽霊のエリーナだけで、後の有象無象は居てもいなくても同じだったなぁ。
「急がないと、敵が近づいて来ています」
「うん、わかってる」
騎士の幽霊が剣を鞘から抜き始めている、それだけ敵が近いってわけだね。
「あった・・あったよ!」
最後には手で土を掻き出したエリアさんは、古びた木箱を祠の下から掘り出した。
木箱に収められた、油紙に包まれた古いネックレスは、小さな宝珠を飾りつけただけのシンプルなもの。その宝珠は色合いは違うけれど、リエンツォ商会のレオニダ君が母から譲り受けたものと同じ系統のものだという事がわかる。
「これって竜の鱗で作られたネックレスだよね?」
「エリアさん、よくお分かりで」
ここに来てまた竜ですか、本当にもう竜関連の話は満腹状態、もういらない。
「まずは僕がつけてもいい?」
敵が近づいて来ているのに余裕です。嫌悪感を露わにした私の姿を見て、いたずらっ子みたいな笑みを浮かべたエリアさんが言い出した。
「君は竜関連のものが好きじゃなさそうだから」
「いやいやいやいや、危ないんでまずは私がつけてみますよ」
竜関連、合わない人が手を出すと命に関わる事もあるからね。
私の場合は、エリーナさん(幽霊)が大丈夫って言っているんだから、大丈夫なんだと思っています。
「それじゃあ、僕が君にこのネックレスをつけてあげても良い?」
「それじゃあお願いします」
ネックレスを付けやすいように、おろしていた髪の毛を手で巻き上げるようにして上げると、何故だかエリアさんは唾をごくりと飲み込んだ。
うー〜ん、エリアさん、女の人が女の人にラブするあれじゃないんですよね?最近、どんどん疑いの気持ちが大きくなってくるんですけどね?
「それじゃあ失礼してつけさせてもらいます」
女同士なのに何故緊張するのかわからない。
宝珠のネックレスを首に回し、金具で固定すると、チリチリと音を立てて火花が散った。
火花はどんどん大きくなり、焦りで冷や汗が背中を流れていく。一瞬視界が真っ白になったのだけれど、その後は何も視界を遮る事なく、森の木々の葉が生い茂る様が目に映った。
この地は呪われていると言われるだけあって、死霊の類がえげつないほど多かった。
エリアさんの騎士の霊がいるから直接的な被害を喰らうことはないけれど、視界が塞がれて気持ちが悪くなっていたのもまた事実。そんな世界が急に明るくなったような、鮮明になったように見えて、木々の間から差し込む夕焼けの光が真っ赤で、深紅の光が滴り落ちるように見えた。
私は大きく息を吸い込むと、
「私!幽霊が見えない!」
と、大声で宣言したわけです。
完全にお間抜け状態ですよ。
私の幽霊が見えない宣言の後に、ものすごい勢いで矢が放たれて来たんですからね。
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