絶望の果てにある力 5
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エリアさんは巨乳で美人の女戦士です。
男の人の視線を集めるのはいつもの事ですし、女である私ですら、目の前に立てば巨乳の胸の谷間に視線が向かってしまうんですよ。
だからですね、巡礼を引き返してきたお父さんが、エリアさんを前にしてお母さんに引っ叩かれるなんていう光景を目にしたところで、あ、それはもう、仕方がない事ですよって思います。
ついつい、視線が向かっちゃう。
だけど、あれは家族連れのお父さんがやっちゃいけない視線だったものねぇ。
ほっそりとした体型のお父さんは、太ったお母さんに叩かれた頬をさすりながら私たちにペコペコ頭を下げると言いました。
「いやあ、本当にすみません!本当にすみません!ここら辺で野営でもしようかと思ったら、火を焚いている人が見えたもんで、誰かいるかな〜と誘われるように来た私たちの事、胡散臭く見えるかもしれませんが、ただの巡礼中の親子なんです!本当です!どうやら王国を狙ってパルマ公国の軍がすぐそこまで来ているらしい上に、ラゴア草原じゃ野盗の類も現れるって言うじゃないですか?家族だけでいるよりも、誰かと居た方が安全だと思いまして、そちらのご都合さえよろしければ、ご一緒させて頂ければと思うんですけども!本当すみません!すみません!」
野営をしていた私たちに話しかけて来たのはロンドーニさん親子で、奥様の希望で息子さんも連れて巡礼の旅に出たところ、最後の最後で聖都に辿り着けずに引き返して来たらしいです。今まで一緒に移動していた商隊とはぐれてしまって困っていた所、野営をしていた私たちを発見して声をかけてきたみたい。
「春の季節は巡礼者も多くなって旅の道中は安全だぁなんて話だから、巡礼に出たんですけどね、まさかそこで戦争がおっぱじまろうとは思いもしないもんで」
「巡礼にかこつけて美味しいものを食べてまわる旅だったんだから、ラルゴ草原にまで足を伸ばす必要はなかったんですよ!」
「だけどなぁ、せっかくここまで来たんだったら、観光がてら聖都まで行った方が良いだろうなんて言い出す人も多くって」
「お父さん、お腹すいた〜」
「ああ、そうだな、すみません、焚き火にあたりがてら我々も腹ごしらえをしてもいいですかねぇ?」
マリオ君は6歳、不安そうに私たちを見ているので、私はにっこりと笑う事にしました。
「私はアンジェラ、こちらの戦士はエリアさん、私たちはこれから戦争になると言うので、聖都で修道女として働く妹を迎えに行く所なんです」
もしも巡礼者に会うことがあったら、聖都に向かって移動しているのは妹を迎えに行くためと嘘をつく事に決めていました。
「どうぞ、焚き火に当たってください。お金持ちみたいに巨大な天幕は用意できないですが、よかったら一晩、一緒に過ごしましょう」
「お姉ちゃん、なんで後ろのお姉さんに抱っこされているの?」
マリオ君が疑問を口にすると、両サイドにいた両親が慌ててマリオ君の口を塞ぐようにしています。そうですよね、私を抱っこして離さないエリアさんのこの姿、アンタッチャブルな感じに見えますよね。
「寒いから、一緒にくっついていると温かいでしょう?」
「あ!寒いから抱っこなんだぁ!」
寒いから抱っこという事にしてください。
女同士で密着して抱っこ、意味わからんと思うかもしれないですけど、そういう事にしてください!
「せっかく二人っきりだったのに・・・」
エリアさん!悔しそうに言わないで!誤解を生むから!
「そ・・そうだ!ダミアンさんが用意してくれた食料、今、ここで開いてみよう!」
エリアさんの膝の上から這い出すようにして逃れると、
「あああ・・・」
エリアさんが悲しそうに声を上げたのでした。
幽霊のエリーナ曰く、聖女と魔女の戦いが起こったのが今から182年ほど前の事であり、ジバオンさん曰く、この時の戦いでカタンザーロ領主館のステンドグラスの一部が落下して壊れたわけですよ。
聖女と魔女の戦いは勝者を生み出さず、相討ちとなって破れる事になったそうで、聖女の死後、功績を讃えるために聖教会が興り、各地に教会を建てて信者を増やしていったのだそうです。
王都ヴィアレッジョから聖都ロンバルディアに向かう聖地巡礼が行われるようになったのが今から百年ほど前からの事であり、歩いて聖地を巡り、聖都ロンバルディアの聖堂で祈りを捧げれば祈願は成就し、聖女の加護が授けられると言われています。
みんなが聖女のご利益を求めて巡礼の旅に出ているのかと思っていたんですけど、
「教会が言う通りの場所しか巡らずに巡礼すると、病気になったり、怪我をするのは有名な話ですよ」
手持ちの鍋で簡単なスープを作って渡すと、お椀を受け取ったセレーネさんが、息子のマリオ君にお椀を渡しながら小さなため息を吐き出しました。
「どういう事かはわからないけれど、教会が言う聖地巡礼をまともに行うと、災難が待ち構えているみたいでね、気力を失われるし、体力が続かないって言うんです。人によっては聖女に倒された魔女の呪いじゃないかって言うんですけど、教会は巡礼の順路を変える気はないし、本物の聖女信仰者は、聖女が与えた試練だとか言ってクソ真面目に巡礼地を辿ったりするんですけど、王国の中に熱烈な信者って実はそれほど多いわけじゃないんですよ」
王国は聖教を国教としては認めていません。多くの王国民が竜の神を信奉しているのですが、聖地巡礼は好んで行う傾向にあります。
その理由は・・・
「途中途中で道を外れて寄り道をして、美味しいものを食べたり、美しい景色を眺めたりしながら進むと怪我とか病気とかにはならないから、そこの所はわきまえた上で巡礼には多くの人が訪れるし、途中途中の街では巡礼者を見込んで、美味しいお店が連なっていたり、滝だとか、牧場だとか、温泉だとかで寄り道をし続ければ楽しく旅行ができる。しかも、巡礼の旅という事もあってお値段はお得に安く済ませる事も出来るし、お金がなくなって困るような事があれば、聖教会を頼ればいい。私らにとっては巡礼がてらの観光旅行みたいなもので、真面目に聖女の加護がどうのなんて考えている巡礼者は少ないんじゃないかなって思いますね」
そうなのです、巡礼者は皆、物見湯山といった気分で巡礼の旅を続けているわけなのです。人によってはエリアさんみたいにオカルト名所を辿ったり、人によっては歴史的建築物を見て回ったり、色々と楽しみながら進むのが巡礼の旅。
歩かなきゃご利益がないと言われてはいますが、貴族は馬車を利用するし、教会が定めた移動ルートも平民と貴族で分けられています。
確かに、180年くらい前に聖女と呼ばれる人がいて、色々な場所で人を助けて歩いたみたいですけど、その足跡を辿る旅を教会が信者に限らずたくさんの人に勧める理由を考えた時、色々と腑に落ちない部分が出てくるのも確かな事です。
「それに誘拐事件もあったでしょう?うちは男の子だからいいけど、マリオが女の子だったらとてもじゃないけど旅には連れ出せない。仲間内なんかでは、寄り道している間は気にするな。巡礼ルートに入ったら気をつけろ。女がいたらまずは手を握って離さないようにしろって言われるくらいで、噂によると教会の人間が誘拐やら何やらやっていたって言うんでしょう?さもあらん、なんて言っている人は結構な数になるかと思います」
手持ちの焼いた肉を切り分けていたご主人のロンドーニさんは、
「お姉さん方みたいな美人さんじゃ、あいつ攫われるか分かったものじゃあねえやね。それだけベッタリ、ピッタリくっついている理由もおじさんは十分に理解しているからね!」
と、明るい声で言いました。
そうですね、そういう事にしてくれると助かります。
「僕は巡礼よもやま話を読んで巡礼の旅に出てみようと思ったんだけど」
エリアさんの言葉にロンドーニさんが微笑を浮かべます。
「あれを出版しているとこが聖教会絡みだって知ってました?」
切り分けたお肉を小皿に乗せて、私たちの前にも置きながら言いました。
「我々みたいな庶民にも興味を持たせる為にあんな本を作って売って、出発地点では、わざわざ質の良い頭巾を配って歩いて、巡礼中に困った場合は、我々教会が助けますよだなんて言い出して、それで聖教へと鞍替えする奴もそれなりにはいたけど、ここにきて誘拐やら、生贄やら、聖女復活やらなんて聞くと、胡散臭さが強くなりまさぁ」
「なんだかね、嫌な予感がするんですよ」
セレーネさんがパンに肉を挟みながら言いました。
「奴ら、王国を裏切ってパルマ公国と手を組んだなんて言っているけど、もっと違う、大きなことを考えているんじゃないかってね」
私も肉を挟んだパンをエリアさんに渡しながら思いました。
そうなのよ、聖女ってピンクの髪をした美人さんだって言われているけれど、ダニエラ親子と同じ系列って事になるわけでしょう?
「聖女はそもそも聖女なのか・・・」
エリアさんの言葉に、ロンドーニさん夫婦が唾を飲みこむ音が響きます。
だって、教会が言う通りに巡礼をすると体調を崩しちゃうわけでしょう?
百年前から続く巡礼って、何かしらの作為を持って始めたものなんじゃないのかなあ。
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