絶望の果てにある力 1
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私、ジバオン・ナダームは現当主であるティモテオ・アメンタの血縁に連なるもの。聖国は滅び、オストラヴァ王国の支配下となった時に、守りの要の地を守るために移住してきた聖国人の末裔となる。
王国では約三百年前、約五百年前と、曖昧に時代を語る習慣があるのだが、これは我々の先祖であり、長命としても有名な竜人の習慣であるらしい。王家は竜神の末裔として人々は崇め奉るのだが、竜神は竜人でしかなく、この大陸に住み暮らす人間は、大概が先祖の何処かに竜人がいると言っても過言ではない。
遥か昔、まだ竜が多く住み暮らしていた時代に、空が割れ、異界に住む巨大な龍がこの世界へと落下してきた。異界より現れた龍は元いた世界を追われたようで、屈辱と怒りをその身に宿し、ちっぽけな竜しかいないこの世界を支配下に置き、飽きたら滅ぼして娯楽としようと考えた。
多くの血が流れる中、特に魔力の強い竜が集まり長龍の討伐を決意する。しかし、異界の龍は恐ろしいほどに強く、弱らせる事は出来ても殺すことが出来ない。
そこで七匹の竜が長龍に戒めをかけ、地面に沈め、動けないようにした。
まるで空に浮かぶ7つの巨星のように、長龍の周囲7箇所に竜体を柱として埋め、封印を行う事で山脈とした。
それは昔、昔の物語。
パラヴィア山脈は異界の龍で出来ており、竜骨は尾根となり、長大な距離となって伸びていく。監視者だったパルメイラ帝国が滅びて、聖国ロンバルディアが新たな監視者となり、聖国が滅びた事によりオストラヴァ王国が新たな監視者となったものの、王家はその役目をすでに忘れてしまったのかもしれない。
伝承によって代々語り継いできた聖国人の末裔であるアメンタ家当主も、
「神話の世界の話だな」
と、昔語り程度にしか感じていなかったのだが、今は真っ青になって側から見ても分かる程度に震え上がっている。
「嘘だろぉ、まさか自分の代で、自分の代で、こんな事になるなんて!」
巡礼少女に会ってからというもの、何度同じ言葉を吐き出したか分かったものじゃない。そんな自分の父親の姿を横目に見た娘のジュディッタ様は、大きなため息をつきながら、テーブルの上に置かれた一本の古い剣を手に取った。
「これが伝承で語られていた竜の角で作られた剣なのね?私の腰の高さほどの長さだなんて、当時の竜の大きさが容易に想像できるわね。それで?パヴィアナ山脈に住む部族との交渉はどうなったの?」
「うちの部下からの報告によると、みんな一様に、こちらの要望を飲む形で山を降りると言っている。麓に住む俺たちは全く気がつく事がなかったが、山の方では、もう何年も前から立っているのも難しいほどの地震が頻回に起こっていたらしい。その事もあって、麓への移住を検討していたようなのだが、そこで声をかけて来たのがパルマ公国で、麓に住みたいのなら自分たちに協力しろと言い出したみたいだな」
息子のダミアンは顔立ちが整っている事と、領兵をまとめる団長という役職もあって、女に困る事がないし、一人の女に夢中になる事もない。
そのダミアンが是非とも嫁にしたいと言い出した女性を見て、実は、思わず吹き出しそうになってしまった。
無理だ、お前には絶対に無理だ。
息子は、相手が女を愛する女だったから仕方がないと、無理やり自分の中の燃えるような恋心に決着をつけようとしているようだが、ふとした瞬間に、
「男よりも女が好きだとしても、一回、男との交際を試してみれば、もしかしたら男の方が良いって事になるかもしれないし・・・」
と、呆れ果てる思考に落ち込んでいるようなのだが、バカは死ななきゃ治らないのかもしれない。
あの方たちが出発する際にも、なけなしの金を払って用意した一頭の馬に食料なんかも載せ込んで、
「あなたの旅が涙のこぼれないものであるように」
と、こちらの鼻が曲るほど臭い事を言っていたのだが、
「ああ、この馬は番と一緒に乗るのに都合が良いな!そもそも貴方がいなければ僕は番の存在にも気が付かなかったんだ!本当に感謝しているよ!」
と言って、女戦士は少女を抱っこして決して離さないようにしながら、さっさとカタンザーロから出て行ってしまったのだった。
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