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絶叫が轟く恐怖の館にて愛を語る  7

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「あ・・・」

 血飛沫をあげて切断された右手に手を伸ばしてみれば、きちんといつも通りについていた。柔らかい感触、目を開ければ視界を遮るようなお胸、巨乳が上にくれば視界をも塞ぐことになるのね。


『アンジェラ?大丈夫?』


 幽霊のミストくん(仮名らしい)が心配そうに私を覗き込んでいる。

 焚き火の炎が燃え盛る姿が視界に入る。長い階段を降りていたはずなのに、どうやら洞窟のような場所で休んでいるようだ。


「僕は感じる事はなかったんだけど、ここは霊圧が重くて厳しい場所らしい。君は気分が悪くなって気を失ってしまったんだよ」

「夢だったの・・」

 最悪の夢だった、本当に最悪の夢だった。

 どうやらエリアさんに抱き抱えられていた私は、身じろぎしながら膝の上から降りると、

「あああ・・・」

何故だかエリアさんが悲しそうな声をあげる。


 ああ、そうか。

「今もひっついている必要ってあります?ここって一匹の幽霊しかいませんよ?」

 この洞窟は神聖なる場所のようで、どんな幽霊だって入って来られない。いや、一匹は居るので、彼はそれだけ特別な幽霊なのだろう。

「君が離れると僕はミスト君すら見えなくなるんだよ」

「ええええ・・・・」

 知ったこっちゃないかなぁ。


 何もない洞窟、見上げるほど高い天井には鍾乳石がぶら下がり、焚き火の炎の光を浴びてキラキラと輝いている。床部分も岩石をくり抜いたようになっていて、床の一部が尖った尾根のように突き出している。


「ここは神殿の最下層、ジバオンは具合が悪くなるから、ここから五階層ほど上で待っているよ」

『アメンタ家の人間もここまでは来れない、本当の最下層はここなのさ』


 幽霊とエリアさんの説明を聞きながら洞窟内を歩き回る。

 今、私がここに居るのは、幽霊たちが私に何かをして欲しいから。

 彼らがして欲しい事をしない限り、私はこの先には進めない。


「ミスト君、この場所って竜の屍の上にあるんですよね?」

 床から突き出した岩を撫でながら問いかけると、ミスト君は嬉しそうに笑った。

『創世記にも載っている話だけどね』

「あっ、ちょっと待ってよ!」

 エリアさんが慌てて私の手を握りしめると、ミスト君の方を見てため息を吐き出した。

「ここまで来て、僕だけ仲間外れは無しでしょう?」

「そうですね」

 確かに、失神して倒れた私をここまで運んだのはエリアさんだもの。


『創世記にも載っている有名なやつだけど、これから僕が一曲歌います』

 うっゔうんと喉を鳴らしたミスト君は、誰もが知っている古い歌を歌い出した。


 天が裂け轟落ち

 地が割れ大地は奥底へと落下し

 悪きものがやってくる

 悪きものがやってくる

 世界の狭間のその狭間 

 神に敗れしもの堕つる

 巨大な体が数多の魂を押しつぶし

 世を暗黒へと引き摺り込む

 聖なる力を呼べ 

 聖なる魂を呼べ 

 聖なる戒めを運べ

 世に現れた七匹の古龍は

 堕落した

 堕落した

 ああ、堕落したのだ


 それは素晴らしい歌声で、幽霊の声のはずなのに、鍾乳石に反射して、声が震えるように木霊する。

 歌い終わったミスト君が恭しく辞儀をすると、パチパチパチと拍手を送るエリアさんがハッとした様子で私の背後にまわり、私の後ろから抱きつくようにした上で、再び拍手を送りだす。

 私の頭の上にエリアさんの顎が乗っているから地味に重いです。

 あと、背中のおっぱいが柔らかすぎます。


「現代語にすると酷い歌ですよねこれ」

 私の言葉に、ミスト君が同意するように頷いた。

「まるで七匹の龍が悪いみたい。聖なる存在は他にいて、七匹の龍は駄目な奴だったんだぞって主張しているみたいで嫌なんですよ」


「うーーん、僕は今、ミスト君が歌っていた歌しか知らないから何とも言えないんだけど、この歌は原曲と違うわけ?」

「訳の問題なんですかね、最後の部分ですけど『堕落した』は正式に直すと『元に戻した』っていう意味になるんです」

「はあ?」


「私は幽霊のエリーナさんから聞いているので知っているんですけど、古代パルメイラ帝国は竜を信奉する国だったんですよね?それで、後からやってきたユケイラ人は鷹の神様を信奉する多神教だったんですよ」

「はあ」


「それで、自分たちの神様の方が偉いんだぞ!って事で帝国の神殿の上に自分たちの神殿を建てるような事までしちゃったんですけど、彼らが歌を、彼らの言葉に変えるときに、悪意を込めて変換させたわけなんです」

「えええ?」


「つまり、元に戻るって事は、彼らにとってはせっかく自分たちの文明色に染め上げようとしていたものが元に戻る、要するに宗教的に堕ちる、堕落するってことみたいで」

「むずっ・・難しいけど、想像はつくかなー〜」


『それじゃあ、アンジェラがきちんとした歌を歌ってみてよ』

「はあ?」


『そこのところはきちんと教わっているんでしょ?』

「まあ、それはそうなんですけど」


「それって今は失われたパタラヴィア神聖語ってこと?聞きたい!聞きたい!」

エリアさんの興奮がエリアさんの顎から直撃となって、私の頭蓋骨に伝わって地味に痛いです。

「はあ・・・こんなところで神聖語の歌を歌って大丈夫なんでしょうか?」


 エリアさんの束縛から抜け出して、とりあえず手だけを握っていると、好奇心にキラキラさせた四つの瞳が私の方を見ています。

 まあ、ミスト君がここで歌えと言うのなら、私がここでやるべき事なのでしょう。


「υξΔ」


 最初の発声は祈りの叫び

 遥か太古の昔には、たくさんの竜がこの世界に住み暮らしていた。

 長寿の彼らは人よりも遥かに賢くて、それゆえに群れ同士の争いは尽きなかった。

 人の世界に馴染む竜も多く、時には互いに争いながら、豊かな世界を作り出す。

 その世界に災いを運んで来たのが堕天の神で、多くの人が死に、多くの竜が死んだ。

 この世が滅びる様に嘆いた竜は争いをやめ、魂を力に、戒めの力を強め、

 堕天の神は地に伏した

 ああ、七匹の竜

 七匹の竜の力あって元に戻った、ああ、元に戻ったのだ

 感謝を捧げよう

 ああ、感謝を捧げよう

 そうして復活の兆しあれば

 我を助けん我を助けん


 なんのこっちゃ歌詞の意味がわからんという顔をしているエリアさんは、きょとんとしていますが、歌詞がわかるミスト君は一緒に歌っています。

 これは本当に古い歌、呪歌とも言える歌によって床から突き出た岩が裂けて、何かの塊が出てきました。

 それは鞘におさまった古い剣であり、私は同様のものをすでに6本持っています。


『ああ!ようやっと渡すことが出来たよ!』


 ほっとしたような声でつぶやくと、ミスト君は霧となって消えていきました。

「もしかして伝説の聖剣的なものが現れたのかな?」

 興奮したエリアさんが飛びついていますけど、そんな素敵なものじゃないですよ。

 ああ、この剣を手に入れてなかったから、私は先に進めなかったんですね


ここまでお読み頂きありがとうございます!

本日、多めに更新します、お付き合い頂ければ幸いです!

モチベーションの維持にも繋がります。

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よろしくお願いします!

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