絶叫が轟く恐怖の館にて愛を語る 6
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ダニエラとビアンカは領都からもほど近い、プレッターナという街の旅籠で働いていたという。
何でも旅の途中で野盗に襲われ、命からがら逃れられたのは良かったものの、どうやらその時の恐怖が原因となって、自分の名前も分からなければ、出自も何もかもが分からない。
娘と思われる方も、助けた後も何日間も高熱でうなされて、ようやく動けるようになった所で名前や出自を問いかけてみても、こちらは声が出せなくなっている。
仕方がないので、母親の方にはダニエラ、娘の方にはビアンカと名付けてしばらくの間は面倒を見ていたのだが、旅籠のおかみさんである自分の妻の機嫌が急降下して悪くなっていく。
困り果てた旅籠の主人は、視察という名目で愛人の家まで移動しようとしていた領主が通りかかった際につかまえて、助けた親子についての説明をしたところ、
「まるで聖女のような人じゃないか・・・」
領主である父は、ピンクブロンド髪をゆるくまとめ上げた、輝くように美しいダニエラに一目惚れをしてしまったらしい。
ダニエラ親子を領主館に連れ込む事になった父を、屋敷の使用人たちも良く思わなかったのは確かなはずだ。母も何度も別邸を用意するからそこに住まわせるようにと父に言っていたのだけれど、父は狂ったように拒否をする。
そのうちに屋敷の人間たちは聖女と同じ髪色をする美しい親子に心酔し、有能だけれど見た目は地味そのものの私たち親子に対して、侮蔑の眼差しを浮かべ、嘲笑を浮かべるようになったのだった。
婚約者であるベルトルト様も、美しいビアンカにすぐさま夢中となり、昼も夜も離さない状態となってしまった。
ダニエラ親子を助けたプレッターナの街にある旅籠に出向いて話を聞いたところ、旅籠の主人がダニエラに手を出していたのは明らかで、
「聖女なんてとんでもない!あんなお綺麗な顔をして、とんでもない悪女でしたよ!」
と、憤りながらおかみさんは怒りの声をあげた。
そうこうするうちに、ダニエラ親子は聖女の再来と言われ、領地の人々も彼女たちの存在を受け入れ、敬うようになっていく。
聖女とは旱魃に水をもたらし、不毛な大地に実りをもたらす者とされ、ダニエラ親子が来たおかげで、疲弊した領地もすぐさま良くなるだろうと大喜びしたものだ。
「私にはダニエラとビアンカがいればそれでいい!お前らはこの屋敷から出て行け!」
ダニエラと再婚するためには母と離縁しなければならない。けれど、父は母に対して離縁のための申請書にサインを求めなかった。
つまりは、母も、そして私も亡き者として、ダニエラを後妻として迎え入れる事にしたのだろう。
親族が戦争で死んでいるという事もあって、誰も父に苦言を呈するものはいない。それに、今のマルサラは、辺境の聖女と呼ばれるダニエラの狂信的な信者で溢れかえっていると言っても過言ではない状態となっている。
私たち親子を匿ってくれる人もいたけれど、裏切り者による密告と、送られてくる刺客によってまず母が殺された。
お菓子を持って駆け寄って来た子供が隠し持っていたナイフに刺されて母が倒れ、襲いかかる群衆を退け、逃げ出した私に追撃をかけたのは私を番と呼んだベルトルト様。
彼は馬上から私の利き腕を切断して、
「後はお前らの好きにしろ、ビアンカが待っているから俺は行く」
と言って駆けて行ってしまったけれど、
『くだらない男なんてさっさと忘れたら良いのよ』
幽霊のエリーナ様が、
『切り口が綺麗だからすぐにくっつければ問題ないわ、周りの男どもは私がどうにかするから、あなたは逃げなさい』
そう言って私を助けてくれたから、私は死なずに今ここにいる。
あのあと、エリーナ様の姿は見えない。
私の為に力を使って消滅してしまったのかもしれない。
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