大陸滅亡の危機と幽霊と 6
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「母上、母上、何故母上は父上に、ダニエラが用意した薬を飲ませようとしないのですか?」
この国の王妃である私、メルチェーデは、プライドばかり高くなって何の役にも立たない我が息子ルクレッツィオの方を振り返ると、私たちの間を遮るようにして近衛の兵士が前へ出た。
「無礼者!私と母上との会話を邪魔するとは何事だ!」
「フランコ、話を少しくらいする位なら構わない」
護衛のフランコを下がらせても、ルクレッツィオはフランコを睨みつけるのをまだやめない。
私には息子がふたりいる。一人は赤髪、もう一人は青髪。赤髪の方は男らしく精悍な顔立ちへと成長した、青髪の方は中性的な美しい顔立ちへと成長した。
無骨な赤髪は貴族女性の戯れなど視界に入れるのも鬱陶しがり、女の柔らかな手を取るよりは剣を手に取り振るう事を選ぶような気性だった。戦に出兵し、いずれも多大なる成果をあげて凱旋した。青髪の方は、剣など握れば血豆が出来ると大騒ぎし、無骨な武器よりも楽器を愛し、貴族たちが跳梁跋扈する世界で己の力を大きくするために励み続けた。
全く正反対の気性、正反対の顔立ち。だというのに、生まれも同じ双子の王子の存在は、貴族たちを二分し、二大派閥を作り出した。
ラディカーティ公爵の娘であるチェレスティーナと恋仲になった青髪は、彼女の純潔を奪い、王家の了承を得ぬまま王子妃として迎え入れて、公爵率いる一大派閥に勢いをつけた。
中立派貴族を取り込む事に成功した公爵は娘の懐妊という慶事もあって、次の王は青髪で決まりだと喜んでいる事だろう。だがしかし、軍閥は赤髪についたまま、今は療養のため離宮に篭りきりとなっている赤髪だが、その赤髪が行方不明だという事は私と夫しか知らないことだ。
「ルクレッツィオ、薬を何故飲ませないと問うが、何故そこまでその薬を飲ませたいと思うのだ?」
侍女と近衛兵を連れた私は青髪の二倍の人数を引き連れている。
この人数が今の青髪と私の王宮での差という事になるのだろう。
「私がお渡ししたのは聖女ダニエラ様が自ら用意したもの、聖女のおかげにて我が妻は無事に懐妊したという実績があるのです。父上も服用されれば即座に良くなる事と思います」
「聖女ではない、まだ、あやつはマルサラ辺境伯夫人というだけの存在にすぎぬ」
「ですが母上!聖女と同じ髪色なのはダニエラ様親子のみ!」
「その聖女と同じ髪色の人間が用意したものだとしても、陛下が吐き出してしまうのだから仕方もあるまい」
鉄扇を広げた私は、目の前の青髪を睨めつけるようにして見つめる。
「我が王家は竜神の血筋とも言われていてな、王家の血を引く私も、陛下も、其方が持ってきた薬物については許容が出来なかった。つまりは、我らの体には合わぬものだったのよ」
「ですが、私には・・」
「お前はそこのあたりの機微がわからんものな」
思わず呆れた声で言ってしまう。
「そもそも、お前の嫁はお前の番ではないではないか?」
「いいえ!チェレスティーナは私の番です!そして私の大事な妃なのです!」
「呆れた!」
我が子の為とはいえ、くだらぬ事に時間を食ってしまったものだ。
「時間の無駄であったな、では移動しよう」
まずは護衛のフランコに声をかけて移動を開始する。
体調を崩したと言っている陛下に代わって国を動かしているのは私であり、北のクシャダス帝国だけでなく、南からパルマ公国の侵攻の話があがり、目の回るほどの忙しさとなっている現状なのだ。
赤髪からの連絡で、聖都にいるロンバルディアの信徒どもが我が国を完全に裏切っているらしい。であるのなら、早々に我が国から信者どもを排除しなければならないという事になる。
春は巡礼者が目に見えて増加するという中、我が国は存亡をかけた戦いを始めようとしている。そんな中で、父親に薬を何故飲ませないだと?
「陛下?」
「いや、なんでもない」
一つ咳払いをすると、私は軍人どもが集まった会議室に向かって歩き出したのだった。
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