序章
「三次元の恋人」 プロローグ
暗い部屋の中で明かりを点ける。一瞬眩しい光に目がくらんだが、少し目を瞑ればいつも通りの自分の部屋が広がる。時計を見れば午前の三時を回っていた。こんな時間だ、まだまだ空は暗い。日本には幽霊がもっとも出やすいと言われる夜中の丑三つ時というものがある。子供の頃はとても怖かった。親に吹き込まれる話と、夜に観る怖いテレビ番組を観た後は尚更だ。そんな子供の頃のトラウマなど微塵もみせずに、最寄り(もより)のコンビニへ行くべく、パソコンの電源を落とす。さっき点けたばかりの電気に多少悪いと思いつつ、またまたそんな事を微塵も思うわけもなく、電気を消して部屋を出る。
外の空気はひんやりしている。今まで部屋の温かい温度にさらされていた衣服も一瞬でひんやりと冷たくなる。取り出した鍵は最初からものすごく冷たかった。僕は足早にマンションの敷地から出ていく。大家さんには悪いが、このマンションの大きさはさほど大きくはない。ほどよい、ごく一般的なマンションといえる。壁は白い木地に、屋根の色は黒。やはり説明してもごく一般的なマンションだ。だが都心近くでこの広さなら十分というものだろう。
そんな事を考えている間に最寄りのコンビニに着いた。最寄り(もより)のコンビニというだけあって、二分僅か(わずか)で着いた。温かい空気と共に店員の素気ないあいさつが聞こえる。やはり夜中の店員というものはこんな感じなのだろうか。まあそんなことはどうでもいい、目的を手早くすませて帰ることにしよう。ここにきた目的は腹ごしらえのための食糧と飲み物を買いにきただけだ。最寄りのコンビニだが店員の顔色を伺っている場合ではない。お菓子とオレンジジュースを買ってお金を払って店を出る。
店を出ると冷たい風が吹いた。服を着ているのに、身に沁みるようなどこか寂しい風だ。帰り道でふと空を見上げる。さほど気にも留めていなかったが、雨は降ってはなくて、夜空には燦然と輝く星空が広がっていた。夜空なんていつから見てないだろう。こっちに上京してきて二年がたつ、それ以来だろうか。大学に入学して念願のパソコンを手に入れた俺だが、そこからどんどん家に引きこもる時間が増えていった。ひきこもると言っても夜は外出することもあるし、昼もごくたまにだけど外に出ることもある。
何か物憂げになり、僕は星空を見上げる。僕にだって友達はいる。あまり多くはないけど、なんでも話し合える友達だ。何が不満かと言われれば。そう、それは彼女いない歴=年齢という事だな。いやまさにそういうことだ。僕はまたまた星空を見上げる。あわよくば、星空にもし神様がいるのなら、叶えてほしい。僕にも愛し合える彼女がほしい。
と、こんなくだらない事を考えていても仕方がない。現実にはそんな事はないのだから、二次元ではアリだが。……つまりアニメや漫画の中だけならある、ということだ。二次元だけでなら俺にも嫁はたくさんいる。年下の女子高生や年上の艶やかな美人マネージャー。考えるだけならタダときている、こんなおいしい話はない。つまり俺は世間一般で言う「オ・タ・ク」と呼ばれる人種である。テレビで見るようなあんな暑苦しいオタクではないが、一般人よりかは何か違うオーラがあるに違いない。
そんな事を思っていたら自分の住んでいるアパートまで戻ってきた。出て行った時と同じ手順で部屋に行く。降りの時はさほど気にも留めないが、上りの時のこの階段はとても辛い、急こう配というものだ。階段を上りきった俺はまた夜空を見上げる。冬の澄んだ星空がそこにはあった。
初投稿作品でございます。
ヌルヌルとまたーり投稿していきます^^
一部ノンフィクション