第三話「戸惑い」
桜の脳内は混乱を極めていた。
突然の出来事に、どこから考えればよいかわからなくなっていた。
(なんで和服の青年が急に……? しかも、さらっとプロポーズされた……?)
プロポーズのような言葉に驚いていた桜だったが、もう一つ大事なことを今思い出した。
「伝説の弓……!!!!」
弓道部に伝わる【伝説の弓】は虚しくも床に転がっていた。
「傷っ! 傷とかついてない??!!」
桜は思ったことをそのまま口にするタイプだった。
「伝説の弓……?」
その言葉に桜ははっとした。
今度は伝説の弓に気を取られ、謎の和服を着た青年から意識が離れていた。
「怪我はありませんか?」
先ほどおおよそプロポーズをしたとは思えない冷静さで、桜の様子を伺う。
「ふ……」
「ふ……?」
「不審者ーーーー!!!」
「ふしんしゃ……?」
「え、どっからどう見ても不審者以外何者でもないでしょ?! え? え?? どうしよう……」
桜は再びパニックに陥り、慌てふためいた。
そうした桜の様子を見た和服の青年は、冷静に対処する。
「え、ちょっと誰か! 誰かーー!! 助け……」
助けを呼ぶ私の声を遮るように、自らの唇で桜の唇を塞ぐ和服の青年。
「──っ!!!!??」
桜は目を見開くことしかできず、どうしていいかわからなかった。
悲しいことに、桜にとってこれが人生で最初のキス──【ファーストキス】だった。
ようやく解放された桜は、顔を赤くして怒りをぶつける。
「な、なにすんのよ!!」
「落ち着きましたか?」
自分とは対照的に冷静な和服の青年の様子に、桜は余計にいらいらとした。
「変態じゃないの?! いきなり初対面でき、き、キスするなんて!」
「いきなり喚き散らす女性を、どうやってなだめろと?」
これまた全く焦ることなく、そして何の悪びれもなく言う目の前の青年に桜は理解ができなかった。
(ひとまず逃げよう……異常者すぎる)
その場を離れるべく、桜は部室入口にあった鞄と部活の弓矢を入れたバッグを背負うと、いい気に校門へと走った。
外に出ると、もうすっかり日も落ちてきていた。
桜は走りながら、考えていた。
(何、あの人……)
桜はおもむろに自分の唇を触った。
(ファーストキス……だったのに)
しかし、桜は自分が感じた感情が、不思議と単純な嫌悪感ではなかったことに今気づいた。
不審者と認定した青年への複雑な感情を処理しきれなかった。
一方、割れたショーケースを見つめた後、【伝説の弓】を拾う一人の人物がいた。
「そうですか、ついに……」
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