第十話「星空の下で」
桜はその夜、眠れずに宿舎の廊下に出ていた。
廊下の突き当りには窓があり、そこから桜は広場を眺めていた。
(玲奈が何もなくてよかった……)
林で霧哉に襲われたあと、三琴が玲奈を抱え、林の入り口まで戻っていった。
そこには、クラスメイトを先に帰し、担任を含めた桜たちを探しに入る教師たちが集まっていた。
玲奈に外傷はないと診断されたが、念のため今日は保健医の部屋で寝ることになった。
(でも、三琴って一体何者なの? それに鬼って……)
そう考えていると窓の向こう側から三琴が顔を出した。
「えっ……」
桜は考えていた意中の存在がまさかあらわれるとは思わず、驚いた。
「なんで……」
「桜に会いに来た。僕と一緒に来て?」
手を差し伸べる三琴。
その手を思わずとってしまう桜。
桜は三琴の手を握ると、三琴にぐっと引き寄せられる。
「──っ!」
「お姫様、参りましょうか」
(三琴の匂い……甘い香り……)
窓の外へと出た桜と、出迎えた三琴。
二人は手をつなぎ、少しの間見つめ合う。
桜が照れた表情をすると、三琴はそっとリードするように桜の手を引いて、歩いて行った。
小さな展望台へと着いた二人。
三琴が桜に話しかける。
「上を見て?」
「上?」
桜が上を向くとそこには満天の星空が広がっていた。
「──っ! きれい……」
桜たちが住む町でも綺麗に星は見えるが、より一面に広がっていた。
見とれる桜に語りかける三琴。
「星はいつの時代も等しく綺麗だと知った。どこか懐かしい……」
桜が三琴に目を移すと、なぜか少し切ない顔をしているように感じた。
(三琴……? なぜそんなにあなたは悲しそうなの?)
桜は夜の闇の中で、愁いを帯びた表情を見せる三琴から目が離せなかった──
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