運命の日
毎日毎日、同じことの繰り返し。朝起きて、支度して、満員電車に揺られながら仕事嫌だな~なんて思って。職場につけばどうでもいいと思いながらも、同僚の愚痴に全力で共感して。たまになんでこんなことしてるんだろう?なんて思ったり。それでも人と違うことをする勇気なんてないから今の現状に甘んじて日々を過ごしていた。どこにでもいる新卒の会社員、それが神林沙良だった。
その日もいつもと同じように電車の中で同じく通勤中のおじさま方に押されながら、ふと想像した。
(もし生まれ変わるなら空とか飛んでみたいなあ。こないだみた映画みたいにドラゴンと友達になっちゃったりして、一緒にいろんなところを回るのも面白そう。
魔法が使えるなら、どんな魔法にしようかな。氷とか水なんてきれいだよね。よくゲームでもみるし。いいなぁ…こんな電車なんか乗ってないで好きな時に好きなことをできる暮らしがしたいなぁ…)
そんなことを考え、つかの間の幸せに浸ってると、ちょうど乗り換える駅についた。他の乗客に押されながら、せかせかと足を動かし次の電車に遅れないように移動する。これもいつものこと。
働きアリの行列みたいに似たような黒いスーツの行列に加わる。
(やっぱり使えるなら瞬間移動とかもいいかな。そしたらぎりぎりまで寝て、すぐに会社だもんね。……そもそも会社には行きたくなはいんだけど)
せかせかと歩いたおかげで、狙い通りの時間に次のホームに着き、電車に乗ることができた。
電車に乗るときにふわりと生暖かい風が頬をなでた。
(わっ、ラッキー! 席空いてる!)
ここから先は少しとはいえ座れるものは座りたかった。どうせ降りるに着くころには人もまばらで座っていたとしても人が多すぎて降り損ねることもない。珍しく空いてることに喜び、今日は人が少ないんだな、週の中日なのに珍しいと思いながら座席に座り風で少し乱れた前髪を整える。
席についてまた空想しているうちに、心地よい揺れが眠気を誘う。寝たら起きられないかも、と自分に言い聞かせるがその甲斐なく眠りに落ちてしまった。
電車はいつも通りに運行し、そしてアクレドーラ国の西端に位置するセイランに到着した。