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記憶に

作者: 卅日 丰

 カメラを持ってドライブするのが好きだった。色んな場所へ行って、思いのまま写真を撮るのだ。ただ、写真は別に好きじゃない。その感覚を友人に話したところ理解を得られなかった。自分でもそのときうまく説明できなかったこともある。多分、レンズから覗く景色が好きなのだ。初めてファインダーを覗いたとき、肉眼で見る景色と同じようで違う景色が、なぜかひどく心を踊らせてくれたのを覚えている。その気持ちをもう一度味わいたくて、こうしてあちこち出歩いているのだと思う。

 車を降りてファインダー越しに周囲を見回していたら、街中の木の上なのに小さくて可愛い鳥が見えた。あれは多分、十姉妹という種類だったと思う。迷わずシャッターを押して写真に納める。カメラを確認すれば、枝に留まった鳥が写真の中央にブレもなく綺麗に写っていた。私は満足し、それ以上は撮らないまま車に戻ってどこへともなく出発した。

 多分この写真も現像されることはなく、容量に圧されてただ消えていく。

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