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9.根回し

いつも、お読みいただき

ありがとうございます(*'▽'*)

「良いこと思いついたわ!」

 

 ポンッと手を打ったリーゼロッテは、手紙を書くと急いでヨハナに出してもらった。

 

 宛先は、王都に居る母方の祖母ブランディーヌ。


 祖父はもう亡くなっており、伯爵領は伯父が継いでいる。どうやら、祖母は伯父の奥さん……つまり、伯爵夫人とは反りが合わないらしい。

 その為、王都の貴族街にあるタウンハウスには、ブランディーヌが一人で住んでいる。


 最後に会ったのは両親の葬儀の時だ。娘を無くした祖母と、母を亡くしたリーゼロッテは、お互いショックが大き過ぎて、殆ど話も出来なかった。

 

 かなりキツイ性格の祖母だが、リーゼロッテは嫌いではない。


(もう、喪に服す期間は終わっている筈。どうにか間に合うと良いけど……)




 手紙の返事を待つ間、テオに教えてもらっている魔力の扱い方を更に極める為に森へと通った。

 最初に湖へ行った日から、時間を作ってはこっそりと森へ向かい、魔法を使う練習をしているのだ。


 勿論、バレないようには心掛けているが。

 うっかり見つかりそうな時は、例の花を摘んでくると言うと了承を貰えるので、忘れずに摘んで来るようにした。


 その成果もあって、今ではすっかりフェンリル並みの強さだ。


 魔力の解放や抑え込み、テオのように姿を変化させる術までも手に入れた。

 まあ、姿の変化と言ってもリーゼロッテに出来るのは、身体に魔力を巡らせ細胞の活性化を促し、一時的に成長できるくらいだが。

 それでも、身体強化よりかなり難しかった。


 基本、テオは魔獣なので教え方は……言葉で理解するのでは無く、感覚的なものばかり。

 だから、全てが無詠唱であり、普通の魔法や魔術とはだいぶ違うようだった。

 

 貴族院で習う内容を知っていれば、より理解しやすいのだろうが。


 この国の社交界デビューは15歳。

 そして、16歳になると、貴族は貴族院で魔法や学問、政治、その他諸々を学べる――筈だった。

 残念なことに、リーゼロッテは社交界デビュー直後に殺されたので、入学が出来なかったのだ。


 それでも、家庭教師から教わっている、初歩的な魔法と組み合わせると、かなり高度な使い方ができることも発見した。

 

 リーゼロッテとテオの特訓の影響か、領地に近い場所の魔物の姿が殆ど無くなり、見張りの騎士達は首を傾げている。


 とはいえ、良い方に作用しているので、森の変化について誰も文句など言う者はいない。

 寧ろ、ルイスの結界が強いのだと、辺境伯領の民は新しい領主に感謝している。


 回復薬の貴重な素材は、湖の周りにまだ大量にあるのだ。

 回復薬が量産出来れば、商業としても確立できるのではないかと、更に領地内は活気付いてきた。


(ルイスお父様は、あの高濃度の回復薬を国王に献上すると言っていたわね……)


 大量の花を持って帰ると、マルクがリーゼロッテとテオを丁度探していた。


「リーゼロッテお嬢様、旦那様がお待ちです」


(来たっ!)


 間に合った吉報の予感に、リーゼロッテはニッコリと微笑み、ルイスの元へ向かう。

 リーゼロッテが部屋に入ると、ルイスは複雑な表情で手紙を読んでいたが、顔を上げて小さく溜息をついた。


「リーゼロッテ、ブランディーヌ様からの手紙が来ているよ」


「まあ! ブランディーヌお祖母様からですか? 先日、お手紙を送ったのですが、何故お父様にお手紙が?」


 白々しく首を傾げて訊いてみた。

 

「近いうちに、私が王都へ行く機会があれば、リーゼロッテを連れて来てほしいと。……寂しくて孫に会いたいのだそうだよ。リーゼロッテは、どうしたいかい?」


「私も、お祖母様にお会いしたいです。お父様、連れて行って下さいますか?」


 瞳を潤ませ懇願するリーゼロッテに、ルイスは苦笑する。どうやら、リーゼロッテの根回しに薄々気がついている様子だ。

 リーゼロッテの国王拝謁の儀には、『お目付け役』として既婚女性で親戚のブランディーヌにお願いしなければならない。だからこそ、独身のルイスは、彼女の頼みを無下になど出来ないのだ。


「分かったよ。では、明後日に出発する。リーゼロッテも王都へ向かう支度をしなさい。フランツはどうするかい?」


「私から聞いてみますわ。……フランツは、お祖母様が苦手ですから」


 そう、フランツはブランディーヌが大の苦手なのだ。絶対に行きたがらないのは分かっている。


 案の定、フランツは「(絶対に)行きたくない!」と言ったので、リーゼロッテは心の中でガッツポーズをした。

 フランツは可愛いが、リーゼロッテが王都でしようとすることに巻き込みたくなかった。

 

 リーゼロッテは、王都で必要な物を全て侍女達に用意してもらった。ブランディーヌの邸宅へ行けば、その家に仕える使用人がいる。リーゼロッテと一緒に行くのはテオだけだ。

 

 念のため、メイド服もこっそり拝借して荷物の中に詰め込んだ。リーゼロッテは、出来たら宮廷に潜り込みたいと思っていた。どうなるかは、行ってみなければ分からないが……。




 ――そして、ルイス、リーゼロッテ、テオは馬車に乗り王都へと出発した。


 

 

 



 

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