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25.色々と混乱してます

「あの洞窟に行ったのは――。ある者を追っていたら、行き着いたのだ。その者については、まだ話すことは出来ないが。その、リーゼロッテの言うループとは何だ?」


 不思議そうに、ジェラールは尋ねる。


「一度死んだ筈の人生を、またやり直している今の現状……ですかね」


「……ふむ。それは、私も理解するのに苦労した。洞窟が崩れ落ち、目が覚めたらベッドの上だったのだからな。しかも、7年も前の自分にな」


「え? 洞窟が?」


(あの後、そんな事があったなんて……)


「ああ。急に魔玻璃から閃光が出て、洞窟が崩れたのだ。あの場にいた者は、全て下敷きになっただろう。多分だが、魔玻璃の魔力が枯渇してしまったのが原因かもしれないな」


「……枯渇?」


「まあ、私の憶測でしかないが」とジェラールは肩を竦めた。


「志半ばで倒れたくないと願ったが、まさか……また人生をやり直せるとはな。信じられない事が起こるものだ。――お陰で、色々と調べ直せた。レナルドの言葉で、私と同じ状況の其方にも気付けたし、良い事ばかりだ」


 ニヤリとするジェラール。

 やはり、リーゼロッテのように、何かを強く願ったのだ。


(それにしても……かなり有能な人ね)


 驚きを隠せないリーゼロッテを真っ直ぐ見詰め、ジェラールは言った。


「リーゼロッテ、其方も()()()()()()があるのだろう? 私に協力をしろ。奴らを潰す」


 この国の第二王子、ジェラールを信じてみようと思った。


「わかりました、協力します」


 そして、お互いの知り得た情報共有をした。

 リーゼロッテの状況をルイスが知っていることに、ジェラールは不機嫌になったが、取り敢えず無視した。

 どうも、2人だけの秘密にしたかったらしい。


(……面倒くさい)


 宮廷の人間は誰一人、ジェラールのループについて知らないらしく、何かあればこの部屋に直接転移して来いと言った。

 どんな仕組みか分からないが、この部屋に人が入るとジェラールに伝わるそうだ。王族お抱えの魔術師が作った魔道具は、かなりの逸品らしい。

 

 やっとジェラールから解放されると、また新たに薔薇の飾りを作り、アニエスに渡した。

 ブリジットと回復したロビンには、呉々も教会関係者には気をつけるように伝えて、リーゼロッテは辺境伯領へと帰った。




 ◇◇◇




 漸く、自分の部屋に帰って来ると、結っていた髪を解きそのままボブッとベッドへ倒れこんだ。

 エプロンのポケットから、テオはもぞもぞと這い出すと、いつものサイズに戻る。


「はあぁ、疲れた……。ジェラール殿下の話、頭がパンクしそう」


 思わず、愚痴が口を衝いて出てしまう。


「それは大変だったね、リーゼロッテ。……いや、今はリリーかな?」


(――えっ!?)


 部屋の中から、怒りを含んだ聞き覚えのある声がした。

 ガバッと起き上がると、恐る恐る声がした方を見る。ソファに座って長い足を組み、爽やかな笑みを浮かべリーゼロッテを見詰める……ルイスが居た。


(ヒェェ、完全にこれはお怒りモードだわ……)


「あっ。お父様、ただいま……帰りました」


「お帰り、リーゼロッテ。こちらへ来て、話を聞かせてもらおうか?」


 ルイスはソファをポンと叩き、横へ座れと促す。怒りの理由が見当がつくので、大人しくソファに座った。


「さて、私が言いたい事は分かるかな?」


「はい」と、リーゼロッテは素直に答える。


「リリーの姿をしているということは、アニエス様に何かあったのだね?」

 

「そうです。私がアニエス様に、何かあったら壊すようにと渡しておいた結界が壊されました。急を要したので、お父様に相談もせず向かってしまい、申し訳ありません」


「それで、アニエス様は?」


「無事です。ですが、危ないところでした」


「そうか……アニエス様も、リーゼロッテも無事で良かった」


 ごめんなさいと謝るリーゼロッテの頭を、優しくルイスは撫でた。


「それで、ジェラール殿下の話とは?」


(あっ、さっきの聞かれてたのね……)


 ルイスの怒りの原因が、そっちだと気がついた。

 そして、今日あった出来事とジェラールの話をルイスに伝えた。勿論、これから協力し合うことも。

 

 中途半端に嘘をつくと、絶対に後で綻びが生じる。

 それに、リーゼロッテは……ループや転生の話をした時、これから先はルイスを信じ、正直でありたいと思ったのだ。


 リーゼロッテから聞かされたジェラールの話は、さすがにルイスも驚愕していた。


「リーゼロッテが殿下を信じると決めたのなら、私も協力するよ。だから、勝手に……居なくならないでほしい」

 

 真剣なルイスの瞳にリーゼロッテが映る。


「はい、約束します」


 その言葉を聞いたルイスは、安堵したのか強張っていた表情が緩んだ。


 ――コツン。


 ルイスは自分の額をリーゼロッテの額につけた。ネイビーブラックの美しい髪がサラッとリーゼロッテの頬に触れる。


「……約束だ」


 あまりにも近くにあったルイスの顔。


 リーゼロッテは直視出来ずに慌てて視線を下げた。

 だから、ルイスの表情がどんなだったのかは分からない。

 ただ、自分の鼓動の音が大きくなり過ぎて、ルイスが気付かないでほしいと密かに願った。

 


 

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