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22.敵か味方か

お読み下さり、ありがとうございますm(__)m

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(言葉の……真意が解らない)


 呆然と立ち尽くすリーゼロッテの頭の中は、ジェラールの言葉がグルグルと回っていた。


 一周目で聞こえた『……やめろっ!!』と言う声は、剣を振り(かざ)した人間を止める為の言葉だともとれる。

 だから、敵なのか味方なのか、判断がつかなかった。


(だけど、さっきのは……。今度は逃がさない、って言ったよね? 私を捕らえようとしている? ん? ちょっと待って……()()()() 今度が今だとするならば、前回は?)


 あり得ない話だと思いつつ、自分が一番あり得ない存在なのだという事も解っている。

 もしかしたら、ジェラールもループを――そんな予感が脳裏を掠めた。


(いやいやいやいや、そんな馬鹿な。あの場に居た人間が皆ループしているなら、お父様やフランツだってループしている筈よね……うーん……)


 もしも、ジェラールも心底やり直しを願っていたら――。

 そんな考えを振り払おうと、頭をプルプル振った。


「……主人よ。さっきから一人で百面相して、一体何をしているのだ?」


 いつの間にか傍に立つ、呆れ顔をしたテオの言葉で現実に引き戻された。

 自分だけでは判断しかねると、リーゼロッテはテオとルイスに相談をしてみることにする。


(うん、三人寄れば文殊の何とかって言うしねっ)


「信じられないことだが……。確かに、リーゼロッテの仮説が正しいかもしれないね。あの殿下が、初対面の人間に()()()()()()なんて言うとは到底思えない」


「リーゼロッテは、一周目でジェラールを知っていたのか?」


「それが、記憶にないのよ……。もし、会ったとするなら、社交界デビューの時しか考えられないわ。王宮での拝謁の儀では、確かに殿下も王族側に座って居たと思うけど、緊張して覚えてないし」


 やはり、個人的には会った記憶は無いのだ。


 ただし……国王拝謁の儀から始まって、舞踏会、翌日の他のデビュタントとの情報交換など、暫く宮殿や王都に居たのだから、何処かで見かけたくらいの可能性なら有るだろう。


「ならば、リーゼロッテにジェラールが一目惚れしたとか?」


「ええぇ……!? あの場には、他にも綺麗なご令嬢がたくさん居たし。万が一そうだとして、一目惚れで殺されるとか……怖すぎるわ、それ」


(日本でこの顔立ちなら目立つけど……この世界の人々は、顔面偏差値高すぎだし。女の私よりも、ここの男性陣の方が余程美人なのよねぇ)


 物凄く嫌そうに顔を顰めたリーゼロッテに、ルイスとテオは顔を見合わせた。


「ルイスよ、我が主人は人間では美しくないのか?」

「いや、親の欲目を抜きにして、かなりの美人になると思うが」


 リーゼロッテに聞こえないようにコソコソ話す二人。


「リーゼロッテ、殿下に会った会わないは別にして。当時の殿下の評判とかは聞いていないのかい?」


「評判ですか……? うーん、無節操な馬鹿王子?」


 完全にルイスが固まった。


「あ、あくまでも裏の噂ですよ。公の場でそんなこと言ったら不敬罪で捕まりますから。あの美貌と地位がありますし、女性が群がるのは当然ですよね。私は興味ありませんでしたけど」


 一周目のリーゼロッテは、ルイスしか見ていなかった。

 それは、叔父としてなのか、義父としてなのか、将又異性としてだったのか……()()自分が言うことではない、そう思った。


「私が護衛していた時は――。子供であっても殿下は何事にも一生懸命で、王太子殿下を慕う真面目なお方だったのだが……」

 

 ルイスはショックを隠しきれない。


「アニエス様といい、ジェラール殿下も成長過程で何かあったのかしら? お二人共、子供の時と違い過ぎるなんて」


(……流石にアニエス様の時よりは不安だけど。ジェラール殿下と、もっと接触してみるべきかしら?)


 考え込んだリーゼロッテに、ルイスは何かを感じたらしい。


「リーゼロッテ、()()()危ない事をしない様に。もし、何か考えが有るなら先に相談しなさい!」


 釘をしっかりと刺されてしまう。


(最近、お父様が手強いわ……)




 ◇◇◇




 ――その頃。


「殿下、辺境伯領はいかがでしたか?」

 

 突然、辺境の地の視察に行きたいと言ったジェラールに、アントワーヌは感想を尋ねた。


「想像以上に、良い領地になっているな。父上が、エアハルト辺境伯に一目置くのがよく解った。近衛騎士としても、出来る奴だったが……」


「それだけでしょうか? ……ジェラール殿下が、見たかったのは他にもあったのでは無いですか?」


「そうだな、レナルドは良い仕事をした」


 意味深長な笑みを浮かべたジェラールは、明言は避けた。

 

(やはりリーゼロッテも、随分と雰囲気が変わっていた。どうやら()()()()()()以前の記憶がありそうだな。……今度こそ、逃すものか)


「予定通り、このまま()()()に向かわれますか?」


 急に押し黙ったジェラールに、アントワーヌは念のため確認する。


「当たり前だ」とジェラールは答えた。


(絶対に、彼女を手に入れてみせる)


 ジェラールは高らかに笑うと、王子一行は辺境地を後にした。

 

 


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