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10.お祖母様

お読み下さり、ありがとうございます!

評価、ブクマ登録いただき、とても嬉しいです♪

 馬車の中で、テオをどうブランディーヌに紹介したら良いかを考えていた。

 いくら、マルクに従者の指導を受けたとは言え、所詮は付け焼き刃。


(だったら、正直に従魔と言ってしまおうかしら?)


 膝の上で眠っているテオを撫でながら、正面に座って資料に目を通しているルイスをジッと見た。

 よく、こんな揺れる馬車の中で酔いもせず、仕事が出来るものだと感心してしまう。


(それにしても……睫毛、長っ! 本当に美青年だわ、お父様)


 リーゼロッテの視線に気が付き、ルイスは顔を上げた。


「どうかしたかい?」


「あっ。えっと、テオを……お祖母様に何て紹介したら良いかと。やはり、フェンリルとは言わない方が良いでしょうか? ただ、従者と言うには……」


 ルイスは、頷いた。


「ブランディーヌ様は誤魔化せないだろうね。従者と言ったら、伯爵邸に居る間……テオは徹底的に教育される筈だよ。だが、フェンリルとは知られてはいけない」


「そうですよね……。では、ミニ狼の魔物を従魔にしたと言ってはダメでしょうか? 従魔なら一緒に居ても変ではありませんし。お祖母様に、従魔を紹介したかったと言えば……」


 今度は、ルイスがリーゼロッテをジッと見る。


「リーゼロッテは……最近急に大人びたね。家出すると飛び出した時とは、まるで別人の様だよ。話していると、8歳だと忘れてしまいそうだ」


「そ、そうでしょうか? きっと、もうすぐ9歳になるからですねっ!」


 意外と鋭いルイスに、冷汗がでた。


(そりゃ、元は私はアラサーで年上だし……)

 

「ああ、そうか……。もう9歳になるのだったな。せっかくの王都だ、帰る前に何か買ってあげよう」


「嬉しいっ! お父様、大好きっ。約束ですよ!」


 子供らしくはしゃぐリーゼロッテに、ルイスは嬉しそうに笑った。


(ふうっ。危なかった)


 どうにか誤魔化し、結局テオはリーゼロッテの案で紹介することに決めた。




 ◇◇◇




「よく来ましたね、リーゼロッテ」


 階段を静かに下りてきたブランディーヌは、ルイスへの挨拶を済ませると、リーゼロッテに声をかけた。

 正に貴婦人……この屋敷の女主人に相応しく、気品漂う人物だ。


「お祖母様。お招きいただき、ありがとう存じます」


 リーゼロッテが美しい所作で挨拶をすると、ブランディーヌは一瞬驚いた表情をした。


「リーゼロッテ、少し会わない間に随分と淑女らしくなりましたね」


 よく出来ましたと、ブランディーヌは笑みを浮かべた。


「ブランディーヌ様、リーゼロッテをよろしくお願いいたします。なるべく早く……迎えに参ります」


「エアハルト辺境伯、心配には及びません。久しぶりに、孫との楽しい時間を過ごしますわ」



 ――そして、ルイスは宮廷へと向かった。



「ところで、リーゼロッテ。()()は何かしら?」


「これは私の従魔のテオですわ」


 リーゼロッテはニッコリと微笑み、ブランディーヌの視線に怯むことなく、テオを紹介した。

 辺境伯領は、魔物が多く住む森を管理している。従魔がいる騎士も多いのだ。


「たまたま、屋敷に迷い込んでいたのを見つけたのです。可愛らしいだけでなく、とても頼りになり私を守ってくれるのです。お祖母様に、是非お見せしたくて」


『くぅ〜ん』


 と絶妙なタイミングで、テオは可愛く鳴くとリーゼロッテに擦り寄る。なかなかの演技派だ。


「……確かに、可愛いわね」


 そう、ブランディーヌはこう見えて動物好きなのだ。


「では、リーゼロッテ。着替えたら、サロンへいらっしゃい。テオも連れてきて構いませんよ」


「はい、お祖母様! ありがとう存じます」


 リーゼロッテは、侍女に部屋へと案内され一息ついた。

 持ってきた荷物の中の、メイド服だけは絶対に見つからないようそっと隠し、他は侍女に託し着替えさせてもらう。


 支度が終わると、ブランディーヌが待つサロンへ向かった。

 扉を開くと、紅茶の良い香りが漂って来る。


(うわぁ、素敵!)


 其処には、リーゼロッテが好きそうなお菓子が色々と用意されていた。

 孫と会うのを、本当に楽しみにしていたのだとよく分かった。礼儀作法にはとても厳しいが、実は結構リーゼロッテには優しいのだ。


 美味しい紅茶とお菓子を食べながら、久しぶりの会話を楽しんだ。

 暫くすると、ブランディーヌは侍女達を下がらせ、二人きりになった。


「リーゼロッテ、そろそろ手紙の話をしましょうか。あれは、一体どういうことかしら?」


「はい、全て手紙に書いた通りです。私は()()()を見たのです」


 そう言うと、リーゼロッテは一周目の出来事を予知夢として、ブランディーヌに説明した。

 ループなど到底信じてはもらえないだろうが、予知夢なら、絶対ではなく可能性として聞き入れて貰えそうだと思ったからだ。


 それを裏付けるように、こう付け加える。


「その夢を見た日から、私の魔力が急に大きくなりました」と。


 テオに教わった、魔力解放を威圧にならないよう少しだけする。

 ブランディーヌが息を呑んだのが分かった。


「リーゼロッテ、貴女を信じましょう。いったい、どんな夢を見たのかしら?」


「はい。7年後に――私とフランツ、ルイスお父様が殺されます」

 

 大きく目を見開くブランディーヌ。


 これからリーゼロッテが王都で行動するには、ブランディーヌの協力がどうしても必要不可欠なのだ。


 ブランディーヌは真剣な眼差しで、リーゼロッテの話を黙って最後まで聞いた。

 





 

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