真実の恋!!
コトちゃんの恋愛です。
「シャンパンコール!!」
真実の恋!!
名前:北野琴哉
年齢:20歳
職業:ホスト
北野家:三男
「やっべぇ。二日酔い…。」
「コトちゃんが二日酔いて久しぶりだね。お酒慣れてるから。」
サナが水を俺に渡す。
「…ありがとう。」
小さい時から将来の夢なんてなくて、大学はもちろん高校も相当レベルが下のとこしかいけなかった。
高校をなんとか卒業して、それでもそんな高校を卒業しても就職するとこはなかった。
そこで目についたのがホストだった。
友達の兄貴がホストだったので、仕事を見せてもらった。
初めは慣れない匂いや光景。でも、一人一人がやりがいや、目標を持っていてすっげぇ憧れた。
俺もやってみてぇ。そう初めて本気に思えた。
友達の兄貴のお陰で、簡単な手伝いをさせてもらって勉強や経験を積んだ。
そして、ハタチの誕生日に『リュウ』として働く事にした。
親父はもちろん、医者を目指すセイに悪影響を及ぼすとほぼ家族全員に反対された。
「俺は本気やりたいと思うならやればいいと思う。その代わり、セイを初め、みんなに迷惑かけるな。」
「わぁってるよ。」
「なら俺は賛成するよ。だってこいつが初めて本気で何かやりたいって言ってんだよ?」
レン兄は俺が本気なのを認めて、みんなを説得してくれた。
そんなレン兄に対して、凄く感謝したし泣きたくなった。
「コトちゃん、どうしたの?ボーッとして。」
「…ん?何にもねぇよ。もうちょい寝てくる。」
「おやすみ。」
「サナ、一緒に寝るか。」
「…バイバイ。」
「無表情で返すな。」
サナにフラれ、部屋に戻るとベッドに倒れこんだ。
「…いてぇ。」
ガンガンと頭が痛い。
時計を見ると仕事まではまだまだある。俺は時間を確認すると眠りについた。
お気に入りのスーツに身を包み、店に出勤。
女の子が多く集まる場所に行って店や自分の名刺を配る。
「あたしもちょうだい。」
自分からちょうだいと言ってくる子は珍しくて固まった。
「お兄さん、ちょうだいよ。」
「あ…。はい。」
名刺を受けとると、その人は俺の手をとり、手を繋いだ。
「お店、連れてって。」
「行きましょうか。」
俺は仕事モードに入り、店へ連れて行った。
「あたし、涼子。お兄さんは?」
「リュウです。」
涼子はふ〜んと軽い相づちをうつと、グイグイと俺を引っ張った。
明るい髪を巻いた髪型はどこにでもいる女の子だった。
まぁ、俺よりも年上だろうと思う。
「ここです。」
俺が店のドアを開けると『いらっしゃいませ。』と、言う声が響き渡る。
「わぁ!!」
涼子は目を輝かせながら俺の顔を見た。
「この子、指名ね。」
早口に言いながら、涼子はソファーに座った。
「何飲む?」
そんな俺に高い酒をいくつも頼む。
ゲームをしたり長い間騒いだ。
「リュウ〜。」
酔ってきたのか、涼子は俺に甘えてくる。
それから毎日のように涼子は店にやってくる。
そして俺を指名してはどこにそんな金があるのかと思うほど高い酒を飲んでいた。
「リュウって新人だよね。」
「まぁね。」
甘えてくる涼子の頭を撫でてやると、小さい子供みたいな無邪気な笑顔を見せた。
「リュウ、指名〜。」
「はい。ちょっと待っててね。」
俺が立ち上がろうとすると、涼子は俺のスーツを引っ張った。
「いかないで…。」
その顔が寂しそうで、泣きそうで、一瞬戸惑った。
俺はもう一度涼子の頭を撫でた。
涼子は力なく手を離し、呟くように言った。
「早くね…、早く帰ってきてね…。」
それから時折見せる暗い顔はどこか不安を俺に与えた。涼子はただの大切な客だ。そう思うようにしていたが、不安は拭えなかった。
「リュウ〜、話、聞いてる?」
客の一人であるリカコは甘えた声で腕を絡めてきた。
「聞いてますよ。」
俺が頭を撫でてやると、涼子とは違う笑顔で笑った。
ガタンッ!!
「涼子ちゃん!?」
その日も来ていた涼子の相手役として俺の代わりにヘルプとして入れた、セイヤさんの声が響いた。
「なにぃ?」
リカコ独特の甘い声が耳もとで響いた。
「リュウ。」
セイヤさんは急いで俺の傍に駆けよってきた。
「ここ、俺が入るし、涼子ちゃん所戻ってくんない?お前呼べって聞かなくてさ…。」
「…はい。リカコちゃん、ちょっと待ってて。」
「えぇ〜…。」
「リカコちゃん、俺と話そっ。」
「セイヤくんかぁ。まぁいいや。話そっ。」
リカコの腕をほどき、急ぎ足で涼子のもとへ戻った。涼子の席は割れたグラスなど、いろんなものが散乱していた。
「涼子…。」
俺の声にビクッと体を震わせ、席を立ち涼子は飛び出した。
「涼子!?」
店を飛び出してしばらく走った所で俺は涼子の腕を掴んだ。
「…涼子?」
「離して…。」
俺の顔を見た涼子の顔は涙で汚れていた。
「離して。」
俺は涼子の腕を掴む力を強くした。
涼子はその手を振り払った。
「好きじゃないなら、あたしに触れないでっ!!」
俺は思わず涼子を抱き締めていた。
「リュウにとってあたしはお客でしょう…?」
呟く涼子は離して、と俺の胸を押した。
「…リュウが名刺配ってたとき、かっこいいなって思ったの…。でもね…、話してみてホストじゃなくて男としてリュウが好きになった。」
「うん。」
「リュウに頭を撫でてもらうのが好き…。」
「うん。」
「リュウの笑った顔が好き…。」
「うん。」
「でも、リュウにとってあたしは沢山いるなかの一人のお客でしょう?」
「…違う…。」
俺自身勝手に口が動いた。
「え?」
確かに涼子は沢山いるなかの一人の客に過ぎない。
でも…
「涼子が笑うとすげぇ嬉しいし、泣くと不安になる。」
「嘘つき。あたしはリュウが他の子と話してるのは嫌だよ。でも、リュウは違うでしょ?あたしがセイヤくんと話してても仕事だし、何にも感じないでしょ…!!」
客に本気になるなんてホストとしては駄目な事…。
でも、そんなの関係ない。涼子が俺にくれたものはずっと大きいものだったから。
涼子と話すと楽しいし、涼子が泣くと辛い。
「他の客にも言ってるって思うかもしんないけど、俺は涼子に隣で笑っててほしい。」
初めて会ったとき、ただの客だった。
でも、他の客と話すとき気がかりなのはいつも涼子で。
目で追っているのは涼子で。
抱き締めたいと思うのは涼子で。
「涼子…俺を見て。」
涼子は俺を見た。
「セイヤさんにも誰にも渡したくない。俺だけを見て。」
涼子は抱き締める俺の背中に手を回した。
「ズルいよ。だって、あたしがリュウの事見てても、リュウはホストだから他の子見るじゃん…。」
「大丈夫だよ…。特別は涼子だけだから。」
「信じていいよね…?」
「うん、信じて、俺を。」
俺たちはキスを交わすときつく抱き締めあった。
手を繋いで店へ戻る途中、涼子は涙で腫らした目を必死に隠していて、それがなんだかかわいかった。
「あたし、リュウの事なんにも知らない。本名も年齢も。」
「こっから始めていけばいいよ。
んじゃ、自己紹介!!
北野琴哉。ハタチ。七人兄弟の三男です。」
「うそっ!!ハタチなの?しかも七人兄弟て…!!」
「大家族なんだよ!楽しいよ、今度おいでよ。」
「うん!じゃ、あたしも。篠田涼子。26歳、会社の事務やってます。」
「事務であんな高い酒飲めんの?」
「高いの頼んだら、リュウの評価上がんじゃん。だからだよ。おかげで、もうお金ないよ。」
ありがとう、と頭を撫でてやると涼子は嬉しそうに笑った。
「リュウって呼ぼうかな、それとも琴哉?」
「どっちでも。」
「琴哉にしよっ!!お店であたしだけが特別って感じするし。お店ではちゃんとリュウって呼ぶよ?」
「…あんま無理すんなよ。」
「お金のこと?お店に行けば会えるから、お店は絶対行くよ。」
「涼子が店に来ない日は俺が会いにいく。
だから、無理しなくてもいいからな。」
「…琴哉だいすきっ!!」
大切な人を見つけたから。
いままでずっとフラフらしてたけど、涼子は絶対に守って行くから。
愛してる。
勝気な君が。
だいすき。
照れたように笑う君が。