緋色の独白
私は駄目なんです。
色々な人に駄目ね駄目ねと言われて生きてきました。
はじめは正直で良い子と言われていたのですが、歳をとるにつれて空気が読めない、嘘がつけないと言われるようになってしまったのです。
紅ちゃんにはじめて言われて気付きましたが、私は疑うという行為がどうにも出来ないそうなのです。
疑うという行為はなんだか、人がやってはいけないような気がするんです。
私が困ったかおして黙っていると、紅ちゃんはイヴみたいだねと一言言って、知らん顔して何処かに行ってしまいました。
イヴ。イヴとは、誰の事なんでしょうか?
彼女は沢山本を読むから、私の知らない事を沢山知っています。
私は、彼女を尊敬しています。
気付いたら、彼女は私の少し困った友達、香奈子に話しかけていました。
香奈子は、困っていました。焦っているように見えました。
話の内容はわかりませんでしたが、紅ちゃんの顔を見るに、きっと楽しい事だったのでしょう。
香奈子は、人見知りですから…。
そう思っていたんです。
…
彼女が香奈子を好きと言いました。恋をしている人を応援するのは友人として当然です。
私はそう言いました。
ありがとう。
紅ちゃんは、ぽつりと、ですが頰を赤らめて言いました。
私は、ほんとに成就を祈りました。
…
私は、あの日、どうしたら良かったのでしょう?
香奈子は転校しました。
紅ちゃんは電話ではわからなかったけれど、恋してた相手です、きっと泣いていたんでしょう。
私は、知っていたんです。
香奈子に口止めをされていて、言えませんでした。
いくら謝っても足りない、ごめんなさい。
でも、言えませんでした。
香奈子に、紅ちゃんと何があったのか、次に会えたら聞こうと思いました。
私は、駄目なんです。
彼女は私に助けを求めてたのかもしれないと、今更思うんです。
私は、疑うという行為が出来ません。
きっと生まれつきなんです。
彼女の強気な、トゲトゲした言葉の裏を、疑うべきでした。
でも、今更気付いても、もう遅いんです。
いくら後悔しても。
私は駄目なんです。
未だに、疑う事が出来ないんです。
彼女がもしかして、自殺だったのかも知れないなんて…。