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君がそばにいるように  作者: 涼
日常
4/5

3.

「いただきます!」


今日も、試衛館は賑やかだ。



「おい碧!お前は何度言ったら分かる?……そんなんじゃ倒れると何度も言ってるだろ!」


(いつもいつもうるさいなぁ……)

毎日毎日発される言葉に、碧はもう内心うんざりしていた。



「土方さん。碧は本当にこれくらいしか食べれないです。でも倒れたことなんてないので安心してください」




土方 歳三。

 この男は、とにかく美男子だ。色白く、彫り深く……、高い鼻の斜め上には、大きくて鋭く吊り上がった瞳が存在している。

形の良い唇は、碧が知っている限り大抵は弧を描いていた。

漆黒色の細く艶やかな髪は、高い位置に結い上げられている。


その見た目通り、ぞっとするほど頭が切れる。意地が悪いのだ。





「まぁまぁ土方さん。碧ちゃんは女の子なんだから。オレたちとは食べる量だって違いますよ」


碧のことを、こうやって“ちゃん”付けで呼ぶのは、ここには隣に座っている人物一人しかいない。



「碧ちゃん。気にしないでいいからね?」

慣れた手つきで、碧はその人物に頭を撫でられた。




藤堂 平助である。

 碧にとって藤堂は、沖田の次に仲が良い大切な友人だ。

藤堂も美男子の部類に入るのだが、意地の悪い土方とは違って爽やかな好青年だ。


伊勢津藩主藤堂高猷のご落胤とも言われていて、そのせいか気品があってとても礼儀正しい。

歳は沖田と同じ19。

長身で色黒な沖田とは真逆で、藤堂は小柄で色白だ。


そんな藤堂は、碧にとってまた兄でもあった。





「でもなぁ、碧君。辛いかもしれないが、あと茶碗半分くらいはおかわりしてくれないか?碧君にもしも何かあったら、私まで倒れてしまいそうだ」


「……っ、はいっ!!近藤先生!」


「……お前は近藤さんの言う事は素直に聞くんだな」

土方さんが”くそっ”と、悪態づきながら碧に文句を言った。




……そう。

この、近藤 勇こそが、試衛館の主であり、碧が最も尊敬している人なのだ。


 決して穏やかとはいえない角ばった大きなゴツイ顔。大きな体。

しかし、近藤は身にまとっている雰囲気が他の者とはまるで違ったのだ。

誰が見ても穏やかそうだと思えるような、そんな優しい目をしていた。


また、誰に対しても常に謙虚な姿勢を崩さない近藤は、誰からにでも慕われていた。





その他にも試衛館の食客はたくさんいるのだが、皆碧たちのことを”いつものこと”と、軽く流していたのだった。

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