2.
「…お。……あお、……碧」
「ん~~……?」
誰かに呼ばれている気がして、目を覚ました碧。
天井が見えたので、どうやら碧は、腰かけていたのに寝転がって寝てしまったらしい。
(夢の中で思い出してた……)
「碧。またこんな所で寝て……風邪引くって言ってるだろ?」
いきなり、天井ではなく沖田の顔が間近に映った。
「でも、眠いぃー……」
「今は師走。こんなことしてると、いつか凍え死ぬよ」
「うん……」
(最近寒くて寝れてないから……眠い)
またその場で小さくくるまって寝ようとしている碧を見て、
沖田は思わずため息をついてしまった。
「碧。最近寝れてない?」
「ううん。全然。いつも通り」
「そう……」
(目の下に隈ができてるのに。俺が気づかないとでも?)
相変わらず強がりな碧を、沖田はその逞しい両腕で抱き上げた。
「わっ!?沖田っ!?!?」
「しーっ……」
沖田は、もう真夜中だというのに大きな声で騒ぐ碧の口を手で塞ぎ、問答無用で碧を連行させた。
(おっ、沖田っ!?)
沖田が食客部屋から真反対の方向に歩き出したので、碧は自分の部屋に連れて行ってくれるのだと気づき、じっとすることにする。
碧の部屋は、女ということもあって、門下生が雑魚寝する食客部屋とは別に用意されているのだ。
「到着」
そんな優しい声と共に、敷いてあった自分の布団に降ろされた。
沖田が出ていく気配がないことに気付いた碧は、思わず、
「一緒に寝てくれるの!?」
と、目を輝かせて言った。
「ああ。……ここ最近の夜は冷えるから」
そう喋りながら、慣れたように沖田は碧の隣へ寝転がる。
(子供のころから沖田は温かくて。異常に体温が低く冷えやすい碧を、よく温めてくれてたなぁ)
そんな昔のことを思い出した碧は、早くその温もりが欲しくなり沖田にくっついた。
「沖田……やっぱ、温かい」
「やっぱり、碧は冷たいな」
そう言って頭を撫でてくる沖田を、碧は若干不服そうに見上げたが、
障子の隙間から入る風に降参し、沖田の厚い胸にすり寄ることにする。
「おやすみ。沖田」
「おやすみ、碧」
(まったく。……17にもなって、男と一緒にあっさり寝てしまうとは……)
碧は、沖田がいるだけで温かくなれる。
沖田が発する言葉まで、お日様のように温かく感じてしまうほどなのだった。