08
翌朝、雷飛は日がまだ上がりきっていない頃に起きた。
まだ寝ている楊麗を起こさないように支度をし、屋敷を出ていった。
自分の家に着くと、直ぐ馬を出して城へ急いだ。
城に着いた時には既に日は出ていた。
「李統様、お食事中失礼します」
李統は朝食をとっていたが、雷飛が来ると箸を置いた。
「おお雷飛か。伝令が来ておるぞ」
「承知しております。一つ確認したいことがありまして」
「なんだ?」
「周介殿と周達殿は出発したでしょうか?」
「ああ、した。昨日の夜中に」
「ありがとうございます」
そういうと雷飛は下がった。
雷飛はいつも会議をしている部屋に皆を呼び、伝令を呼んで戦況を聞いた。
周介と周達は持ち場に着き、典勝も賊の城の西十里に兵を伏せた。
賊はこの城の東五里に陣を布いたという。
「わかりました。今から私が指揮をします。劉帯殿はいらっしゃいますか?」
「ここにいます」
「劉帯殿は兵500を率い、夜襲をして下さい」
「はっ」
「目的は勝つことでなく兵力を削ることですので、決して出過ぎず、程良い頃合いに引き上げて下さい」
「承知しました」
劉帯は準備に取りかかるために下がった。
「劉帯殿以外は城から打って出てはなりません。決して動かず、泰山のようにして下さい」
その後、一通り細かい指示を出した雷飛は城内にある自分に用意されている部屋で休んだ。
普段、小屋のようなところで住んでいる雷飛には少し落ち着かなかった。
昼寝をしようと思ったが寝付けず、城内を散歩することにした。
城といっても、豪華なものでもなく、無駄に大きいだけ。
村を囲うように立っている城壁は高めに作ってあるが、修理をしていないのでボロい。
だが、小高い丘の上に立っているので、守るのは簡単で攻めるのは難しい。
高いところに城があるときに困るのは水だが、ここはわき水がいくつもあるので困ることはない。
賊は時々くるのだが、このような大軍では始めてである。
兵法では城責めをする際、城兵の三倍の兵力を要するという。
賊の兵力は1万。城兵は6000。
勝つことは難しいにしても、負けることはない。
それに今回の作戦が巧く行けば、賊将張宝の首を取ることもできる。
しかし、戦とは不確定要素が多数あるもの。
だから油断は禁物。敵を侮ってはいけないのだ。




