02
楊麗は城で一二を争う美人で、交際を求められた回数は数知れず。
それに美人と言うよりもかわいいという形容詞がよく似合う女性であった。
彼女は雷飛の事が好きらしく、よく家を抜け出して雷飛に会いに来ている。
「やあ、どうしたんだ?こんな雨の日に。とりあえず入って」
雷飛は楊麗を家の中に入れ、戸を閉めた。
「で、どうしたんだい?」
雷飛は楊麗を座らせた。
「うん。実はね、今朝変な夢を見たの」
「変な夢?」
「そうなの。雷飛が戦に行って死んじゃう夢…」
「フッハハハ!俺が死ぬ夢か」
「笑い事じゃないよ!」
「ハハッ悪い。でも夢の中で俺が一回死んだんだろ?」
「うん」
「なら俺は一回分死ぬ思いをしなくなったって事だ。吉夢だよ」
「そう…なの?」
「ああそうさ。何でも悪い方向に考えたら本当に悪いことが起こるってこと。だからいい方いい方に考えるんだ。絶対に良いことが起きるから」
雷飛は笑って見せた。
「うん、わかった。ありがと、励ましてくれて」
「こっちこそ心配してくれてありがとう」
楊麗は笑顔で帰って行った。
外はすでに晴れているが、日が傾きかけている。
「畑を見ておくか」
雷飛は外に出た。
ずっと降っていた雨によってぬかるんでいたが、作物自体は大丈夫だったので家に戻ろうとした。
そのとき、雷飛を呼ぶ声がした。
そちらを見ると、馬に乗った男がこちらに向かってくる。
「雷飛殿!」
李統直属の武将、周達であった。
「周達殿、どうなされた。そんなにあわてて」
雷飛は口調を変えた。
さすがに公然ではいつもの口調はいけない。
「李統様が緊急の軍議をお開きになる。雷飛殿も至急出席するようにと旨だ」
「承知しました。すぐ支度をして向かいます」
雷飛は急いで家に戻り、服を着替えた。
そして、自分の馬に飛び乗って城に向かった。




