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最後の戦い
「……そういうことなのか。」
空は黒く、地上はもう見えない。
百科事典の上、黒龍と己。
後は彼我を埋め尽くす嵐があるだけだった。
「行くか……。」
三度、黒龍と戦う。
一度は龍の体内で。
二度は時間を遡り。
そして今、戦うしかない。
「世界線の力を、ここに。」
異都 望が行使する。
完全時空世界線を。
時を操るとは、空間を操ることと同義。
黒龍が発する黒い霧、その空間まで飛翔する。
「……最悪、ここで死ぬわけだ。」
「最初から死んでる、そういいたいのかい?」
「影は物についていくだけだ。」
どうやら異なる自分たちは覚悟を決めていたようだ。
「……ありがとう。」
返事はなかった。
それでいい。
いまは。




