アビスの原点
『……聞こえますか?』
女神の声だ。
「初めて会った時も、そのセリフだったな。」
『!!……何を。』
心に念じたことがわかるのか、相手はラスエルの様だ。
「それで、いったいどうしたんだ。」
『私たちは、今、評議会にいます。』
13の言葉に呼応する者たちが、話し合いをする場所だ。
『最初、姿を消してしまって申し訳ありませんでした。』
そういえば、龍が現れてから姿を見ていない。
ただの一柱も。
『私たちは、何とか評議会の場で、結界を作っています。希さんは今どこに?!』
「……いまは石板の上……、百科事典をよじ登ってる……クッ!!」
風が思いのほか強い。
暗雲立ち込め、雷雨も伴い、それらはもはや嵐であった。
『一体何をしようとしているのですか!』
女神は強い語気だった。
「この世界、ひいては13の言葉……、それを探しに行くのさ。」
『……。』
少しの間、会話がやんだ。
耳には嵐が吹きすさぶ。
『わかりました。私たちは、評議会の場にて何か黒龍への対策を講じます。』
『具体的な策がないのですが……。』
沈黙。
『今はあなただけが頼りです。』
「知っているさ。もう少しで百科事典を登りきる。こっちはこっちで、いろいろやってみるよ。」
こうして雷雨の中、会話は終わった。
しかし、女神たる少女の、感情的なところに初めて触れたような気がした。
こうして、場面は二つに別たれた。
13の言葉を探す希、そして評議会にて議論する柱。