誰にもわからない
『ついにあなたは、成ったのですね、希さん。』
桜色の光に包まれた空間。
ここは、理想の神の世界。
『交わるはずではなかった、自らと自ら。』
『あなたに理想の加護を……。』
桜色の理想は両手をこちらに向けた。
するとどうだろう、桜色の閃光が体を打ち抜く。
春の陽気のような、暖かく、優しい。
体の不調は整えられ、心の臓も、普段通りに脈を打った。
「これは……。」
『私の加護です。あなたは、もはや一つの世界の存在ではなくなりました。『核』を三つ持ってしまった者……、その不調を治す『調和』となるでしょう。』
どうして俺に、とは聞かなかった。
「……ありがとう。」
素直に感謝が出た。
『本来、私たちの権威や加護と呼ばれるものは、非常に高度な技術です。しかし……。』
『絶対の神……、いえ、絶対の者が失われてから、他の世界を治めるために、この技術を使うようになりました。』
ラスエルも言っていた。
神々は元は生き物であり、高次元生命体だと……。
『……一体、あなたは?』
『私は、そうですね、あえていうなら高次元生命体でしょうか。』
反芻される記憶、現実世界での死、ラスエルとの出会い、その時の会話。
『本来は別の世界へと干渉するには、何らかの力が必要です。そして、私たちにはそれがありました。』
『そして、世界線の安定を図りました。ですが……。』
視線は足元へと落とされた。
『……黒龍、いえ、生きた『概念悪』は、力をつけ、私たちのもとまでたどり着きました。』
『何が正しいかはわかりません。私たちがしてきたことも……。』
『ですが、彼の者は世界線を破壊し続けているようです。』
分かっている。
アイツは概念悪で、世界線を喰らい、そして、全てを包み込みこむ。
「行かなくては。皆が待っている。」
『……戦うのですね。彼の者と。』
「……はい。」
神々がしてきたことは、正しいことなのか?
それは分からない。
神でさえも。
そして、最初から知っていたことだ。
神々も生物だということを。
本当の意味での神ではない。
あえて言うなら、高次元生物。
他の世界戦を管理するのが傲慢か、世界の安定化を図っているだけなのか、それは誰にもわからない。
ただ、戦う。
自らが今いる世界のために。
地へと光は誘う。




