反
三つの核を持つ生物はいない。
心臓を三つ持つ人がいないように。
しかし、希は持ってしまった。
異なる世界線の自分、影の自分、そして、己。
これら三つの核が合わさり、また、互いの存在が混在するに至る。
「そういえば、ここは龍の頭蓋、頭の中だったはずだ。」
『そうだが……、脱出する算段はあるのか?』
『彼がそれを持っているとは思えないけどさ。』
頭の中で複数の声が響く。
影、異なる自我、そして己の思考。
「……白い大地に、黒い空。頭上を舞う星、ここは本当に龍の体内なのか?」
『正確には黒龍の頭蓋、その中だ。』
『さらに足すと、ここは別の世界線だ。』
「なんだって?」
異なる都が答える。
『簡単さ。黒龍は『世界線』を食べる、生きた『概念悪』ということさ。そして、体内で喰らった『世界線』を行使し続ける。』
「この空間にも、世界線と概念悪があると?」
『そういうこと。ほら。』
何かが足元に落ちる。
『この空間を生み出した『世界線』だ。効力を止めると、元の世界に戻れるはずだよ。』
……本当にそうだろうか?
『迷ってるのかい?』
「ああ。……今までは、女神が……、ラスエルが、世界の間を送ってくれていたからな。ここで世界線を止めると、どうなるかはわからない。」
この世界ごと消滅する、なんてことになるかもしれない。
その時だった。
『さん。……さん。……、希さん。』
「この声は。」
『知ってるのかい?』
「ああ。この声は……、理想神だ。」
目の前の球体は眼前を照らし、桜色の世界へと旅立った。




