13の言葉 存在
光速の一閃、それらに呼応するかのように、体は動いた。
「不思議な瞬間だった。あの時、光速の世界を認識していたのは……。」
影は俺の体の下で、丸くなっていた。
「俺と、相手だけのはずだった。しかしお前は動いた……、動いたんだ。」
「相手の攻撃はネリチャギだった。お前の頭はスイカ割のスイカよろしく、真っ二つのはずだった。」
『でも動いた。』
影を遮り、言葉を重ねる。
そうだ、俺は無意識に知っているはずだ。
なぜなら……。
「……予想がついていたと?」
『そうだ。俺は、あらゆる知っている技を想定した。』
『立場を変えて考えればわかる。俺が、アイツなら、相手が予想している技は使わない。俺が想定していた技は……。』
『頭突き、目つぶし、金的、水月、手刀、正拳……。』
「しかし、相手がなぜそう考えると分かったんだ?」
『簡単さ。』
少し笑みが零れる。
『相手は俺自身なんだからな。』
「……ご名答。」
『……さて。』
目の前で倒れている『アイツ』、全てを照らす光になるか……、はたまた。
体を起こし、相手の瞳を覗き込む。
影は異なる都に龍が流れていると言っていた。
『本当だ。……眼が紫色になってる。』
病的な白さ、儚さ、それは初めて会った時のままだったが、瞳の色や表情、微妙な筋肉の使い方は、まるで別人だった。
相対したからわかる。
『こいつをもとに戻す。公算は??』
「……俺とお前が全力で『存在』をとどめようとすれば、3割ってところか……。」
俺は再び笑った。
『……十分だ。』
右手の世界線はすでにひかりはじめていた。