光の先へ
「恐らく、一瞬で決まるぞ。」
『文字通りの一瞬、刹那か。』
そうだ。
相手の力を利用するのだから、まずは相手の攻撃をいなさなければならない。
次の瞬間、立っているのはどちらか、そういう戦いだ。
『相手がどう攻めるかわかっているのか?』
「実はな。」
そう、俺にはある程度のアタリが付いていた。
次にヤツが攻撃する場所が……。
『何?!』
「恐らく、これも恐らくなんだが……、思考が龍に乗っ取られているのなら、世界線を狙ってくるはずだ。つまり……、この右手だ。」
餌が目の前にあれば飛びつく。
『……馬も龍も同じ、か。進化しても利己的なところは変わらない。ならばなぜ、生物は進化するんだろうな。』
感傷に浸る時間はない。
ここで決める!!
砂埃のような、何かが足元か広がる。
空間だ。
目の前の景色が、蜃気楼のように溶けて、溢れて、流れてくる。
されど、惑わず。
瞬きを超えた刹那、それを手繰り寄せるためには、精神の安定は必須。
見つめるのは相手のみ。
右手にかけてくる技は何か、それをいなし、利用するのだ。
言葉では、思考では、遅すぎる。
『お前……。』
『この時俺は思ったのさ、アイツは何かが切れて、全てをあきらめてしまったのかってな。』
『でも、それは違った。』
『なんせ両目を開けたまま、口も開けっ放し、両手は足元まで下がってるときたんだ。』
『だけど、アイツはむしろ諦めとは正反対にいたんだろうな。』
『すべてを懸けていたんだ。命も、世界も。』
左足刀、脇抱え、反転右足刀
あらゆる攻撃を想定する。
それらは脳内に『影』として残るが、敵がその動きをしなければ消える可能性。
頭突き、目つぶし、金的、水月、手刀、正拳……。
相手の動きを考え、感じる。
そうだ、できるはずだ。
相手は俺。
別次元の己なのだから。
そして今、眼前に広がる景色に一部の隙も無く、また。
漏れ出た可能性も無かった。
『おい……。』
相手の動きを見た瞬き、その先へ




