決戦の時
「いったいどうしたんだ?」
異都望の様子がおかしい。
「態度や心情が変わるとき、目の色が変わるというが、こいつは文字通り目の色が変わってるぞ。」
そう、本来は赤い瞳のはずだ。
太陽を思わせるほどの。
「だから言ってるだろ、君は僕をどうするつもりなんだい?!」
「お前をもう一度、吸収して、一緒に龍を止めに行くつもりだが。」
「できると思ってるのかい?この龍は世界を喰らうモノなんだ。本当に僕たちでいけるのか。」
「考えたことはないかい?!」
『……どうやら、アイツは汚染されてるらしい。』
「汚染?」
『そうだ、影と光、互いに干渉しあうので、適当にヤツの影を探ってみたんだが。』
影が言い淀む。
『龍の一部が流れてる。』
「なんでそんなことになってるんだ……。」
『今にして思えば、龍と対峙した際、アイツは単体で龍の中に入っていったんだ。俺たちと違ってな。精神が耐え切れず、逆に取り込まれてしまったのかもしれん。』
「そんなことができるのか?」
『わからん。しかし、アイツの瞳の色を見るに、この推測が正しいことを物語っている……、残念だがな。』
「……やるしかないのか。」
互いに歩み、近づいてゆく。
「俺はお前と、龍を止める。」
「本当にできるのかな?」
そういうことか。
精神の闇に眼をつけられてしまったのか。
いまや奴は龍の眷属、我が身に非ず。
『おそらく、絶命する直前に取り込むことで再生するはずだ。』
『しかしな、希、お前のやろうとしていることは……。』
時は満ちた。
互いの身を包む多角形は、時計の刻みと共に砕けた。
「……来るッ!」