光の結晶
「ここは?!」
先ほどまでいた龍の口内とも体内とも違う空間。
頭蓋の中。
「ここに異都望がいるんだな?」
「理想の神が言うにはな……。」
宇宙よりも暗く、赤褐色の光線が行き交う空間だ。
円盤のような、足場が一つだけあり、それ以外には何も見当たらない。
外に見える光線と暗闇は、それこそ宇宙なのだろうか?
「周りにあるのは無と有の間のものだ。」
「……知っているのか?」
影が言う。
「……知っているさ、あれこそが俺のいた世界線から光を奪った原理。光を喰らうモノ。そうか、この龍が。」
光を奪った……。
「俺の世界は影の世界。しかし、それは現在の姿。もともとは光があり、影もある、そんな世界線だった。しかし、ある時、暗黒から生まれたモノが世界そのものを喰らったんだ。そして、その世界線からは、光という概念そのものが消えた。」
「じゃあ、いまお前が影になっているのは……。」
「そうだ、まさかその光を奪いし者が、こいつだったとはな……。」
こういう時に口調が荒くなるのは、自分に似ていると、希は感じていた。
「安心しろ、俺にとってお前は影だ。なら、俺がお前の光になる。消えた概念は、別の世界線から持ってくればいい。」
「おまえ……。」
「さて、そろそろアイツについて聞いてもいいか?」
円盤の中心に、誰かいる。
ひざまずいて、顔を伏せて、誰かわからない。
白く、色のないヒトのようだが。
「俺もそれについては知らない。しかし、理想の神が言うには……。」
ここに来た時と同じことを影は口にした。
影の干渉を影響というのか?
光を喰らい、結晶化させた龍の意思。
そして、光と影は互いに干渉しあう。
そして、それに触れたか……?
白きモノは立ち上がり、こちらを見た。




