対照
あの時と同じだ。
異都望と共に空を舞い、龍と対峙し、そして、体内に取り込んだ。
時を支配し、空を操り、ようやく向かい合うことができた。
しかし、前回と違う点がある。
それは異都望がいない、ということである。
そして、俺には影がついた。
結局、龍の体内では異都望を見つけることができなかった。
「(どこにいるんだ……、あの野郎……。)」
次あったときは下あごを外す勢いで胸ぐらをつかんでやろうか。
「おい。」
影が聞く。
「世界線をどこかにしまっておいたほうがいい。おそらくだが、概念悪を取り込むのが龍の目的なら、世界線にも食らいつくかもしれないからな。」
「どこにしまうんだ?」
様々な装備は消えてしまった。
この長旅で、消えていったものは何だったのか?
「右手……。」
「え?」
「右手の甲に亀裂があるだろう。そこに入れておけ。」
右手の甲に世界線が入る、亀裂に沿って、形を変えて。
そのように想像する。
すると、世界線はその思考を汲んだかのように、動き、手に馴染んだ。
「……感覚的にはわかってきたってことか。」
「……ところで、どうして右手の甲にひびなんか入ってるんだ??」
「え……。」
何故だろうか。
わからない。
ただ、ひどく忘れてはいけないような……。
「……。」
「……。」