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空に抱かれて
「……希さん、あなたには話しておきましょう。」
「その前に。」
「これを……。」
時の流れが逆転する。
現在の時刻が決定る。
使用者の意志によって。
『私の権能は、真名にあるように、最後の女神です。』
これは、この世界に来た時の説明だ。
女神たる少女、ラスエル。
その意味は最後の女神。
彼女の存在がある限り、次の神は現れない。
『あれは、神の百科事典です。私たちの真名マナをはめ込み、安定を図る。』
『……なぁ、ラスエル、あれはなんだ?』
『わかりません、見たこともない存在です。』
……ここまで聞こえていたとはな。
この龍の五感の鋭さは、予想外の範囲にあるようだ。
「そら、世界線の起動に成功したんだ。そろそろこの龍が口を開けるころだ。」
「ああ。」
見逃しはしない。
ただ一度の機会を。
「今だ!!」
世界線の光が道を指し示す。
「時間を支配するということは、空間を支配することと同義だ。」
龍と対峙する。
ついにこの時が来た。