完成した力
「なるほど。確かに、この龍の中に入ったとき、龍を体に取り込んだ。まだ、俺の体に空きはあるのか??」
影が答える。
「そうだ。お前の想像では自分の体に空きがあって、そこに『概念悪』を取り込む、という感じだろうがそれはちがう。」
「どちらかというとだな……。」
「空きが増えてる、と言ったほうが正しいか……いや……。」
影も迷っている。
「その龍はお前に寄生しているようなものと考えたほうがいいかもしれんな。」
「概念悪を取り込む空きとは別だ、と。」
「なるほど。それで行こうか。」
ここまで来て迷いはない。
思いも、時間も。
「なんだ、いやに素直じゃないか。」
「ならお前は捻くれてる。」
「ははは、影だからな。」
互いに裏。
コインの裏と、『その裏』。
交わる境界線上に実体と影がある。
「今後についてだが。」
体調が快方に向かっている。
今まで感じなかったものが、感じられるように。
五感が戻ってきた。
これも、影が戻ったからだろうか。
「異都望の救出と龍。後はこの世界の『概念悪』についてか??」
「そうだ。影が戻ってから、体調は良くなっている。だが、まだ完全ではない気がする。」
「そうか。」
「これは龍の外では感じなかったことだ。これは体内の龍の瘴気によるものかと思っていたが……。どうも、異都望が関係しているようだ。」
「……なるほど、なるほど。」
生命は完成を求める。
……体に穴が空きっぱなしじゃあなぁ……。
「肝心のアイツの行方は分からない。」
「とりあえず、龍の外に出ていく必要があるな。」
「しかし、この手じゃ……。」
影が嗤う。
「さっきの『世界線』……、『逆流捻転世界戦』を使ってみろ。」
「『世界線』の完全な力を……、見せてやれ。」




