響く影、影響
「それで、あの子はどうだ??」
「依然と何も答えようとはしません。」
「そうか……。」
「しかし、きっと大丈夫だろう。」
「……なぜ、そう言い切れるのですか。」
「そうだな、不思議なことに、人には得手不得手がある。」
「……はい。」
「あの子にも、あるはずだ。」
「ただそれが、少し世間に評価されにくいだけだ。」
「では、行ってくる。」
「はい。」
「おい、声を出せ。」
「んあ?」
ここは龍の中だ。
戻ってきた……、のか??
「お前、今のは何だ??」
「今のって、なんだよ。」
「いきなり倒れたと思ったら、なんか別の……、そうか、これがお前のいた世界か。」
「どういうことだ。」
「見ろ、足元の世界線を。」
そこには黒と白の、モノクロの様な砂時計があった。
上の三角形は右側が白く、左側が黒い。
下の三角形は右側が黒く、左側が白い。
そして、砂時計のように、何かが流れている。
「それは、お前の持っていた世界線と俺の持っていた世界線の影が合わさってできたものだ。」
これは、世界線の形が変わっている??
「光と闇、反発するが、無いといけないものだ。わかるか??」
「いや……。」
「いいから聞け。これから話をする。お前のことだ。」
「お前の世界線と俺の影、それが合わさりその世界線は完全なものとなったはずだ。」
「だがな、今のお前ではそれを使うことは難しいだろう。」
「足元を見ろ。」
何もない。
「そうだ、本来あるはずの影がない。」
「なぜならそれは、俺だからだ。」
「今。わかった。そこの世界線が完成したとき、わずかだがその力があふれた。」
「その力によって、お前の記憶がこちらにも来た。」
「その世界線は、きっと……、逆流捻転世界線だろう……。」
「だから、記憶も双方向に移動した。俺の記憶に逆流したんだ。」
「そしてな、これも言う。」
「今、世界線とその影が合わさったんだ。互いの考えや行動を超えてな。そして、害がないことが分かった。ここまではいいな??」
何を言っているんだ。
「いいか、よく聞け。今わかったことだ。お前が俺を受け入れない限り、双方の世界は救われない。」
「なんだと?!」
思わず起き上がる。
「おそらく、お前と俺のいた世界はものすごく似ている。だが、違う。」
「それこそ物と影のように、似ている。」
「どうだ、俺を受け入れてくれないか??」
「お前の体、『空き』があるだろう??」
「世界線と影が合わさっても、害はないことは証明したんだ。」
「俺の言うことにも耳を傾けてみないか??」
「……いいよ。」
「ん??」
「……わかったから、入ってこい。」
「……助かる。」
「だがな、お前の体の中にはいかない。俺は、お前の裏にいる。」
「影だからな……。」
この世界に来てからは、失ってばかりだった。
色を、望みを、体さえも龍に近づいた。
しかし、ようやく得た。
小さな、小さなたった一つの影を。