ある男の一生
「それでは、行ってくる。」
!?
どこだ?
ここは。
ここは……、どこだ……。
龍は……、世界線は、どうなった??
わからない……。
妙にまぶしくて、軽い頭痛がして、そして、眠い……。
『希さん、あなた、現世では様々な交友関係があったそうですね……。』
わからない……。
『……私のことはゴアと……、ゴアと呼んでください。』
だ、れ……?
『……その声は……、イデか……?』
??
……男……??
「ハッ?!」
セミの声がする。
部屋を埋め尽くすような感じで。
二階の部屋から道路が見える。
道路が見える。
道に車が止まっているのも。
門を開けて車に乗っていく。
アレは一体誰だろう……??
とりあえず体を起こす。
ベッドには何か抜け殻のようなものが残った。
何なんだ……、コレ……。
抜け殻はそのままに。
ドアを開ける。
階段だ。
……進むしか、ない。
足音がしない……??
どこなんだ、ここは……??
裕福な貴族の家の様に見えるが……。
階段を降りると通路だ。
通路だ。
……廊下、か。
ん?!
後方から音がする。
さっきの抜け殻だ。
抜け殻が階段を下りてくる。
思わず廊下のほうに出てしまう。
抜け殻は一瞥もせず、向かいのドアを開けて歩いて行った。
……向こうに、何かあるのか。
嫌な予感がする。
ドアを開ける。
ドアの向こうには、ものすごく大きな部屋があった。
ステンドグラスの窓に、長机が三つ横に並んでいる。
パーティ会場のようにも見える。
一番ドアの近くの、一番右の机でさきほどの抜け殻はいた。
誰かと向かいながら、食パンを口に入れている。
食べる、というより、口に入れているだけのような、そんな気がした。
そのあとは、服を着ているようだった。
そして、あてもなく、左右に体を揺らしながら、抜け殻は屋敷の外へといった。
後をついていくと、大きな建物の中に入っていった。
そこはいろんなモノがいた。
大きなモノ、小さなモノ。
そして、イロのチガうモノ。
白い人骨が、赤い操り人形を取り囲む。
ただ一つ、抜け殻を除いて。
しばらく、ここでの様子を見ていた。
ただ、眺めていた……。
ここはどうやらどこかの世界の様だ。
人骨共はいつも、ここにやってきては赤い人形を取り囲む。
次第には誰かが骨を投げた。
投げた、投げた。
操り人形の糸に、誰も気づかない。
雁字搦めに縛られた人形に、誰も気づかない。
そして、抜け殻もただ見ているだけだ。
……この世界に夜があるのかはわからないが、いつも決まった時間に人骨共は集まる。
人形も、抜け殻も。
こんなコトを何回も見た。
繰り返し、何回も、幾度となく……。
そのうち、操り人形は動き出した。
ほかの骨に話しかけたりしているのだろうか。
しかし、やはり骨共に囲まれてしまう。
最後には傷だらけになって部屋を出ていく。
最終的に、人形と、何もしていない抜け殻すらも取り囲み、骨共は円を作った。
ここにきて、抜け殻は動き出した。
自らの周りの骸骨を、薙ぎ払った。
どうやらこいつは自分の身だけは守るらしい。
そのうち、骨たちも抜け殻を攻撃しなくなった。
それでも、人形はいつものように全身に傷をつけていた。
見かねた抜け殻が、動いた。
今日は何が違うのかは知らない。
でも、抜け殻が人骨共の投げる骨をつかんだ。
人形に、当たる前に。
その日はそれで終わった。
骨たちは去った。
人形の糸は一つ切れていた。
生傷だらけの人形だ。
とりあえず、今日は抜け殻のいたベッドに行こう。
どうやら向こうからは見えていないようだ。
抜け殻の後を追う。
しかし、今日は違った。
抜け殻に人形が付いていく。
どこかに寄り道し、夕日が差す丘へ。
……ああ、そうか……。
『……君は?』
『……初めて会ったときのこと、覚えてる?』
『……あの時、君だけだった気がする。』
『君だけが……。』
これは……。




