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浸食
体から力が抜ける。
戦闘は、戦いは、終わったのだ。
その場に倒れこみ、動くことができない。
影が何かを落としたのに、手に取る距離まで動くことができない。
這うようにして、移動する。
「これは……?!」
手に取ると、金属の様な、冷たい音が鳴った。
世界線のようなモノが三つあった。
アイツは言っていた。
これらは世界線の影だと。
しかし、俺の持っている世界線は二つだ。
影は自分を名乗っていた。
ならば、逆説的に、俺は三つの世界線を持っているはずじゃないのか……??
光あるところに影があり、正極には負極がある。
善悪、正負、光陰、対になるものは、番を見つけて、初めて対になるのではないか。
「ん……っ?!」
しかし、考えてみるとおかしなことばかりだ。
回収した世界線は、女神たる少女……、ラスエルが持っていくはずだ。
「何故、俺の手に二つの世界線が……っ?!」
息を吐く。
気が付くと、もろ手の浸食は肘まで来ていた。
哺乳類の柔肌を龍族の外骨格が覆っていく。
この浸食、歪みが全身にまで到達したのなら……。
俺はどうなってしまうのだろうか。
残された時間は多くはない。
「(しかし……。)」
大丈夫なのだろうか。
初戦でこれほどの消耗。
良くも悪くも予想外のことが起こる。
しかしそれも……。
「……考えるだけ無駄、か。」
ここは自分の知る世界ではないのだからな……。




