影の収束
三度、対峙する。
何もないように見える空間を凝視する。
足元に伸びる影はこの龍、そのものの攻撃と考えていいだろう。
「お前は、自分のことを俺だと言った。」
「そうさ、お前の影だ。」
「それは違う。」
「何?!」
驚き方まで同じなんだな。
「驚き方模造したのに、わからないのか??」
「お前自身の、矛盾に。」
「黙れ!!」
感情が動いた。
やはりそうか。
この筋で行こう。
「投影、お前が最初に使った、攻撃だ。」
「さっき左手を攻撃したときに、全身を攻撃しておけばばれなかったものを。」
「黙れと言っている!!」
影がこちらに向かってくる。
対峙してから、初めての能動的な攻撃だ。
「……来るっ!!」
同じように、右手を軸に後方に飛んだ。
「んっ!!」
変化した左手が重い。
体重の移動を誤ったか。
「(やはり、そうだ。希は俺の招待に気付き始めている……。)」
「(しかし、空中に飛んだのは間違いだったな……。)」
「(俺の投影は、物質を影から影へと伝うことができる。影が光に対応して動く限り、俺は光の速さで動くことができる。)」
おそらくそれは、希も気づいているのだろう。
では、なぜ撃墜されながらも、再び奴は身を翻したのか……??
ヤツの推理は、このアサルトシャドウが物を送り込む能力ということに気づいていない。
せいぜい、俺自身が移動して攻撃するときのみ、実体化するというところまでだ。
それも、仮定、もしもの話。
推測の域を出ない一つの可能性。
そう、見誤るな。
情報戦において、こちらは圧倒的なアドバンテージを持っているということに。
確かに、アサルトシャドウにはそういう側面もある。
俺自身が移動し、とどめを刺すこともできる。
しかし、それこそが俺の狙い。
「(希にその、『仮定』を作らせるための囮。)」
「(アサルトシャドウでは、移動しかできず、攻撃するときには動きが遅くなると、思わせるための、偽りの、情報。)」
影が一点に集まる。
俺の真下だ。
どうやら、次の一撃で決まるようだ。
「(光速で切り裂く。この刃で!!)」
「(トゥルーブラック!!)」
「(ダークソード!!)」
「(どうだ、これが影の力だ!!)」
どうだ。
どうだ。
……?!
「な、なんだ?!」
希の顔、その眼は閉じていた。
まるで、迫りくる剣を知らぬように。
「フン、死体がないところを見ると、龍の餌にすらならなかったか。」
何もなかったはずの空間に、煙が立つ。
光速で移動したため、焼き切れたのだろうか。
希の体を貫いた。
世界線はどこだ。
「どこを向いている。」
胸に何かの感触が。
「なぜだ、なぜ、ここにいる。」
考えられる可能性は、いつだって、無限だ。
「希いいぃぃぃぃっっっ!!」
「お前、わざわざわかりやすいように、俺が地面に着地する瞬間を、攻撃しただろ。この、影の剣を持ったまま。」
「だから、この、お前が変えてくれた両手で、防ぎ、弾き、そして、捉えたのさ。」
「ま、後はこの剣が影でできているなら、俺の影を自称するおまえにも、届くんじゃないかと、そう思っただけさ。」
「馬鹿な……、それでは、なぜ、俺の攻撃があの速さで来たかの説明がつかない。」
「そっちはもっと簡単さ。」
黒い影の空間が収束する。
「お前は俺の影なんだろ??」
「なら、俺の情報戦の一側面、ブラフを使ってくることもわかるさ。」
「フッ……、そうか。」
元の空間に戻ってきた。
戦いは、終わったのだ。
「ならば、これを持っていけ。」
すると奴は、影以上に黒くなり、そして、消えた。
足元に何かが転がる。
鈴のような音が聞こえた。
「これは……、世界線の……、影?!」
目の前の鏡が消えた。
もうここにいる必要はない。
進もう。
世界のために。




