影
いつの間にか体内の明るさに眼が慣れたのか、自らの周りに何があるかを、わかり始めた気でいた。
そう、龍の体内は薄暗い。
それでも、ヤツがドコにいるかは視えた。
そう、視えたんだ。
しかし、今は『今』という現状を理解するために、思考を巡らせていた。
影の世界で物がぶつかることはない……、この仮定が正しければ、ヤツの取っている戦い方がわかる。
すなわち、戦法が。
この薄暗い空間にまだら模様のように展開する影。
そのどれかに身を潜め、隙を伺う。
龍の体内は少しだが、常に動いており、影も移動する。
「影同士が重なったとき、奴は影をつたって移動……。」
俺の背後や頭上から現れ、攻撃する。
そして、影の形は光の照射方向に対応する。
ここから導かれる答えは、奴は光速で移動することができる、ということだ。
「(もう一度姿を消してから、何もしてこないな……。)」
おかしい。
そう、光の速さで動くことができるのなら、なにも影にひそむ必要はない。
圧倒的な速度で影をつたい、俺を攻撃すればいいだけだ。
「(攻撃する時に何か、条件があるのか?)」
ここからは仮定の時間だ。
仮定一……、ヤツの世界線は『投影』だが、他の世界線を持っている。
光速で移動できるのはそのため。
攻撃に利用できないため、待ち伏せをしている。
「仮定その二……、影を利用することはできるが、影を作ることはできない。」
こうして考えていることを口にするのは、相手への精神攻撃のためだ。
文字通りの、口撃……ってな。
「故に、攻撃の瞬間だけ、動きが人並みになる……とかな。」
光速で移動するのならば、質量も必要ない。
体の先で触れるだけで、俺の体は消し飛ぶはずだ。




