腸壁に非ず
大きな凸レンズのような……、なんて言ったらいいのかな……、人の大きさ位のガラス片があった。
簡潔に表現しようとするが、どのような物質かわからないため、憶測が憶測を呼び、迷いが生じる。
ああ、なんかいつもより、考えること多いな俺……。
理解していても、心はついてきてくれないモノだろうか。
この硝子片しかないのか、ここは。
向こう側が見える。
どうやら、この部屋と向こう側を仕切っているらしい。
右手の甲で三回、叩いてみる。
木琴のような音が響いた。
鉄琴じゃないのか……。
音は反響し、後ろの壁からも響いているのが理解できた。
さて、どうやって向こう側に行こうか。
次第に体は動かなくなる。
その場に座り込み、思考する。
「(向こう側に行くにはコイツをどうにかしないとな……。)」
腕を組み、うなる。
いい考えが浮かばないと、体は横にそれるのだな。
この龍の体に入って、右手は紫色になり、瘴気を放っている。
黒い鱗に外骨格。
考え事をしていると視界の確保を忘れがちだ。
妙案を思いつかず、ただ、その透明の膜と向かい合い、眺めていた。
右手が放つ瘴気が影を作り始めた。
目の前の欠片に何かが映り始めた。
想いかげず、戦闘態勢を取る。
と言っても、驚いて立ち上がっただけなのだが……。
「何が映っている……?」
瘴気が辺りを包み、欠片の向こう側が見えなくなる。
代わりに、『何か』が映る。
「お、おまえは……。」
そこに移るは自らの影。
「俺は……、お前だよ。」
「これは、ガラス片でもなければ、龍の膜でもないっ!!」
「こ、これは……、鏡だったのか……!!」
影が嗤う。
「そうさ。」
「お前の影さ。」
右手だけでなく、全身が瘴気に包まれている。
実体はあるのか??
わからない。
「……分析しているな、恐怖の裏返しか……?」




