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今宵の宴は大騒ぎ

白い衣もみな脱いで

飲めや歌えや 杯交わす

人に非ざる 耳や

酒と共に飲み干そう

我ら 姿形ちがえども

互いに手取り 友の情

沸き立つ思いに立ち上がる


「希さん、今日は飲みましょう。」


ゴアの表情もいつもより柔らかい。

そして、周りの獣人達も笑っている。


「折角です、希さん、乾杯の音頭を!」


イデも今日は飲むらしい。


「悲願のギルド設立を祝ってーっ!」

「乾杯!」

『乾杯ッッッ!』


店中が揺らぐような声が響く。

いつもより大きな料理、特別な酒、笑いあう者たち。


「(きっと……。)」

「(きっとこれを見るために、転生してきた……なんてな。)」


自分も少し浮かれているようだ。

何か食べる前に酒を飲んでしまったからだろうか。


「(……なんてね。)」


テーブルにどんどん大皿に乗った料理が運ばれてくる。

魚や獣だろうか。

そのほとんどが贅沢に一匹丸ごと使用されている。


「今日は私の奢りだから、みんな食べて食べて!」

「ウオーッ!」


イデも大判振る舞いか。

ふと横を見ると、ゴアが何か手帳のようなものを見ている。


「どうかしたのか……?」


少し顔が赤い。

きっと酔いが回っているのだろう。


「ええと、これはですね……、その……。」

「料理も食べてないみたいだし、何を見てるんだ?」

「そうですね、今日くらいはいいか……。実はこれ、私が書いている本です。」


周りの獣人達が目を丸くする。

2秒くらい時が止まったのかと思うほど静かになり、波が押し返すように騒がしくなった。


「ハハハ……、本と言ってもギルド設立や今までの活動を書いたもので、日記みたいなものなんですけど……。」


酔いで赤い顔がさらに赤くなる。

周りの獣人達も初めて聞いたのだろうか、口々にその驚きを言い合った。


「いままでのこと……?」

「ゴアもいろいろしてるんだな。」

「忙しかったろうに。」


俺のいるテーブルの周りはいつの間にか獣人達に囲まれていた。

よく見ると、群衆を掻き分け、こちらに来る獣人がいる。


「つまり、私たちの歴史って訳かい?!」


人と人の間から顔を出し、良く通る声で言う。

今まで見たことないような獣人だ。

女性なのかな。

そういえば、作業場はほとんど男しかいなかったような。


「そうですね……。そんな感じです。」

「へぇー。ゴアにそんな趣味があったなんてね。」

「イデも知らなかったのか?」

「まあね。希が知らなくて、他の獣人が知らないことは私も知らないかなぁ。」

「なるほど。ゴアはそう言えば、ギルドの設立の後で、何かしたいことはあるのか?」

「え?」


驚きに満ちた顔をする。


「そうですね、まずは私たちの願いを。今はそれで十分です。」

「そうか。」

「もちろん、夢があるにはありますが。」

「え?」

「いえ、何でもありません。」


俺は聞き逃してないぞ、ゴア。

あえて聞き返しただけで。

その夢、叶うといいな……。


「さて、みんな、今日は盛り上がっていこう!」

「オーッ!」


イデの呼びかけで熱気が戻る。

その時だった。

店の入り口が破壊されたのは。

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