覚悟
「……実はあなたを此処に呼んだのには理由がありまして。」
「……今日の夜にもう一度会えませんか?」
食事中にゴアからの提案であった。
食事の後、14星間後にまたあのお店で会う約束をした。
今日は初出勤の日でもある。
「(昼からでいいなら、すごく楽な仕事だな。)」
とはいえ、素直に喜ぶことができない自分がいた。
獣人が虐げられているという事実が、少年を縛りその喜びすらも縛っている。
自らの待遇の良さの下に、獣人の屍があるのだから。
どうしようもないと言えばそれでお終いだ。
「(……そういえば。)」
ピュイの実を運んでいるとき、ふと頭に沸いた思念。
女神たる少女から、この世界を救う期限を聴いていなかった。
「(もしかして、本当に数百年単位の時間がかかるのか?)」
給料を貰い、宿に帰る。
扉を開けるとゴアと目が合う。
「……おかえりなさいませ。」
「今日は部屋に戻りますね。」
「……そうですか。どうぞ、ごゆっくり。」
夜に合うまでは特に話し合うことはない。
というよりも、ゴア側が何か話をしたがっている気がしてならない。
「(ゆえにこちらから話を振るのは下策。)」
向こう側から来るのを待つしかない。
そして、その時間は明確に知らされている。
今日の夜にもう一度、あの店で会う。
「(だから、それまでは……。)」
今はまだ、待つことしかできない。
部屋の窓からは夕日が赤く、朱く射していた。